【映画】Dallas Buyers Club (2013) 

Dallas Buyers Club (2013)   –  Biography | Drama | History  – 22 November 2013 (USA)

 

【あらすじ】

Ron Woodroofという実在の人物を元にして作られた映画。1985年テキサス。電気技師だったロンは突然エイズの診断を受け、余命30日と診断される。当時はエイズに対する治療薬もなく、全てが手探りの状態だった。エイズの治療薬として期待されていたAZTの臨床試験に参加しても、薬が効果的であるという保障はないばかりか、治療群と偽薬群のどちらに入れられるかさえ分からない。ヨーロッパやイスラエルでは、エイズに効くかもしれない薬が使用されていたものの、アメリカでは食品医薬品局(FDA)の認可を受けていないため、個人で輸入することさえ許されていなかった。すでに免疫不全状態となっていたロンは、メキシコから薬を密輸することを決意する。

 

【感想】主演のマシュー・マコノヒー、ドラッグクイーン役を演じたジャレッド・レトの演技が素晴らしかったです。余命いくばくもないエイズ患者の鬼気迫る演技に心が震えました。本当に病気なのかと思いましたよ…。

 

主役のロンは、カウボーイハットにブーツの典型的なテキサス男。女癖も口も悪く、ホモフォビアの最低な男でした。それが、密輸したエイズ治療薬を売るため、ドラッグクイーンのレーヨンと仕事上のパートナーとなり、大勢のゲイのエイズ患者と接するうちに他人に対する敬意が芽生え始めます。最初は女装ゲイであるレーヨンの事を毛嫌いし、差別発言を繰り返していたのに、一緒にはたらううちに仲間意識が芽生えたのか、彼のことをいわれのない差別から守り、彼の健康を気遣うようになる過程が感動的でした。

 

Dallas Buyers Clubは、ロンが海外から密輸したエイズ治療薬を他のエイズ患者に売りさばくために作られました。当時、FDAが認可していない薬は、海外で使用実績があってもアメリカ国内で使用できず、認可されるまでには10年以上の年月がかかっていました。余命30日と診断されたロンは、エイズの文献を読みあさり、効きそうな薬を手当たり次第密輸しては自分の体で試します。日本からインターフェロン2000バイアルを密輸する場面もありました。彼はDallas Buyers Clubを通して、他のエイズ患者に高い値段で薬を売りつけるのですが、そのお金で決して贅沢をしていたわけではなく、新しい薬を大量に仕入れたり、国外から薬を密輸するための資金としていたようです。彼を頼ってDallas Buyers Clubに来たエイズ患者たちも、他に特効薬があるわけではなく、ロンが仕入れてくる薬のみが頼りだったのです。

 

FDAは、大規模臨床試験を通過した安全性の高い薬だけを認可するため、エイズの治療薬が世間一般に流通するのが遅れたわけですが、認可を遅らせただけでなく、ロンの仕入れた薬を押収するなどして、個人の選択の自由も阻害します。エイズで死期が迫っていれば、藁をもつかむ思いで何でも試したいと思うし、自分の体に入るものは自分で決める権利があってもいいのではないかと、歯がゆい思いでした。FDAや、科学者、医師たちの言い分としては、何万人もの人が使う薬だから重篤な副作用が出ないよう、万全を期して試験を行う責任があるということなんでしょうけど、死期が迫っている人にとっては、FDAや政府の方針は、何の助けにもならないどころか、邪魔でしかなかったのではないでしょうか。現在は、免疫不全状態に陥るのを防ぐ薬があるようですが、それらの薬が開発、認可されるまでには、大勢の命が踏み台になったということを重く受け止めなければならないと思いました。

 

主演のマシュー・マコノヒー、ドラッグクイーンのレーヨンを演じたジャレッド・レトは、役のために20kgあまり体重を落としたそうです。二人とも病的に痩せていて、脂肪はおろか筋肉までげっそり落ちていました。後ろ姿など、腰骨が浮き出ていて完全に死期が近い人の体つき!死期の迫った患者がわずかな希望にすがりつく気迫が凄かったです。

 

Ronは、余命30日と診断されてから7年後の1992年に亡くなったそうです。エイズ治療薬の探求と密輸は彼の生きがいでもあったんだろうなと思いました。

 

何か大きな賞を獲ってほしいな…。日本では2014年2月22日に公開されるようです。


ダラス・バイヤーズクラブ [DVD]

 

 

 

カテゴリー: 映画 タグ: パーマリンク

コメントを残す