【オーディオブック】Driving Mr. Albert: A Trip Across America With Einstein’s Brain

Driving Mr. Albert: A Trip Across America With Einstein’s Brain by Michael Paterniti

時間:7時間46分

発音:アメリカ英語。

速度:150語/分前後。

オススメ度:★★★☆☆ アインシュタインの脳だけでなく、作者の回想録、旅の途中で出会った人々の事などが語られ、話が飛び飛びなのがイマイチ。アインシュタインの脳の行方については面白かった。

 

【あらすじ】

1955年、アルベルト・アインシュタインは、動脈瘤破裂のためプリンストン大学病院で亡くなった。病理解剖を行った医師、トーマス・ハーヴィ医師は、アインシュタインの脳と病理レポートを自宅に持ち帰り、大学側が返却を求めても応じなかった。ハーヴィ医師の言い分によると、遺族側の了承は得たというが、後に遺族は脳をハーヴィ医師に託した事実はないと否定したという。その後、病院を辞職したハーヴィ医師の行方は分からなくなったらしい。

1990年代、この本の作者は、アインシュタインの脳を秘密裏に所持しているドクターがいるらしいと聞き、偶然にもハーヴィ医師の電話番号を入手する。電話をしてみると、40年経った今でもアインシュタインの脳を保管していると言う。そこで作者は、ハーヴィ医師がアインシュタインの孫娘に脳を届ける手助けをするため、83歳のハーヴィ医師を助手席に、アインシュタインの脳をトランクに乗せ、アメリカ東海岸からカリフォルニアを目指し、4000マイルの旅に出ることになったのだった。

 

【感想】

アインシュタインの脳は、240個にカットされ、ホルマリン漬けでクッキージャーに入れられ、ハーヴィ医師宅に40年もの間保管されていたらしい。研究目的に脳を欲しいと連絡して来た人には、脳を少量切り分けてスライド切片にして送ったらしいが、いったいハーヴィ医師に何の権限があってそんな事をしたのだろう。

 

4000マイルを旅して、西海岸にいるアインシュタインの孫娘に脳を届けた2人だが、結局彼女が脳を受け取る事はなかった。突然タッパーに入った祖父の脳を渡されても困惑するだけだろう。

 

ハーヴィ医師がアインシュタインの脳を自宅に持ち帰った動機については、直接本人の口から語られる事はなかったのだが、作者は意外なところから真実を知ることになる。ハーヴィ医師はカリフォルニアから戻った後、プリンストン病院の病理医師に、個人的にアインシュタインの脳を託したのだ。

 

アインシュタインの脳を受け取った病理医は、病院に脳を置いておくと掃除の人が誤って瓶を落として割ってしまうかもしれないし、何千万円もの価値があるものだから盗まれてしまうかもしれない、と不安をもらす。では一体アインシュタインの脳をどうするつもりなのかと作者が問うと、「自宅で保管するのが一番安心かな」と答えたのだった。この答えを聞いて、まるで40年前のハーヴィ医師が語っているかのような錯覚に陥った。彼らはアインシュタインの脳の守り人だったのだ。

 

ホルマリン漬けにされ、タッパーに入った脳にアインシュタインの本質を見出す人がいるのかもしれない。魂のない、ただの抜け殻と思う人もいれば、アインシュタインの脳こそが、偉大な科学者の象徴であると崇拝する人もいるだろう。当の本人がもしこの状況を見ることが出来るとしたら、困惑するのではないだろうか。アインシュタイン自身は、現世に未練はなかったらしく、生前に大動脈瘤の手術を勧められたのも断ったそうだし、死後に遺体を展示されたりしないよう、火葬を希望したらしい。

 

宇宙の真理を発見した偉大な脳も、それを成し得た生命活動がなくなった今は、ただの遺物でしかない。それともいつかホルマリン漬けの脳から状態の良いDNAが抽出され、アインシュタインのクローンが作成される日がくるのだろうか。そんな事になれば、アインシュタインの脳を守ったハーヴィ医師の行動が賞賛される日が来るのかもしれない…。

Driving Mr. Albert: A Trip Across America with Einstein’s Brain

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