【オーディオブック】Stiff: The Curious Lives of Human Cadavers

Stiff: The Curious Lives of Human Cadavers

時間:7時間59分

発音:アメリカ英語。声があまり良くない。

速度:170語/分前後。

オススメ度:5 out of 5. 死体のことを楽しく学べる。

 

【あらすじ】

死体について知り得る事の全て、と言っていいのではないかと思えるほど、あらゆる角度から死体について語られている本。

 

【感想】
死体はこれまで、ギロチンのテスト台になったり、スペースシャトルに乗り宇宙に送り出されたり、車の衝突事故テストに使われるなどして、生きている人間の役に立ってきた。この本は、死体と科学の発展の関係について真面目に紹介しつつも、あまり重くなりすぎず、時には冗談を交えながら、死体の”有効活用”ぶりを伝えている。ここまで死体の話が面白くていいのか!?と、多少の後ろめたさを感じつつも、心から楽しんで読んでしまった。

 

どの章も面白かったのだが、その中でも特に印象深かったエピソードを幾つか紹介しておく。

 

犯罪科学捜査のため、死体の腐敗具合を研究している大学グループのエピソード。犯人が死体を隠す際のあらゆる場面を想定し、死体を車のトランクに入れた状態を再現したり、庭に放置して腐敗具合を観察したりするそうだ。その光景、匂いを想像するだけで口の中に苦いものがこみあげてきそうになった。さらにその科学者の方は、遺体からサンプルを取る時、誤ってハエを吸い込んでしまい喉で羽ばたかれたそうだ。世の中には想像を絶する辛い仕事がある事を知った。

 

フランスにおいて、ギロチンで断首された頭を観察した人の話も生々しい。切断された頭はコロンと転がったあと、目をパチパチして半開きまで瞼を閉じる。そこでその人の名前を大声で呼ぶと、意識のある様子でゆっくりと目を開いてこちらをみた。また目を閉じたので大声で呼ぶと、二回目もゆっくり目をあけ見つめてきたが、3回めには反応が無くなったそうだ。脳への血流が途絶えた後、組織に残っている酸素で僅かなからも活動があるのだろう。

 

地雷撤去の時にどんな履物が安全かという実験では、死体20体を天井から吊り下げ、いろいろな種類の靴を履かせて地雷を踏ませる。そして足の吹き飛び具合から靴の安全性を調べるそうだ。いくら死んでいるとはいえ、地雷で吹き飛ばされるのは恐ろしい。

 

飛行機墜落事故現場の死体を調べる専門家は、死体の損傷具合から爆発物が仕掛けられていなかったかを調べている。万が一飛行機が墜落した時の事のために、どこらへんに座っていたほうが安全か、という質問に対しては、墜落の仕方のよって違うので一概には言えないということだった。「それでも、あなたならどこに座るか」と食い下がった著者に対して、「ファーストクラス」と言った専門家の答えが面白かった。専門家を以ってしても墜落時に安全な席を予想出来ないならば、万が一落ちた時の安全性より快適さを追求したほうが良さそうだ。

 

人体に関する用語や犯罪科学用語などが使われているものの、一般人向けに分かりやすく説明されており、読みやすい本だった。グロいのが苦手でなければお勧め。

邦訳は「死体はみんな生きている」。

YL:8

語数:80,531語


Stiff: The Curious Lives of Human Cadavers


死体はみんな生きている

 

【今日の一枚】

アリゾナ州で見かけたカラス。

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