【映画】Kill the Messenger (2014)

Kill the Messenger (2014)

主演: ジェレミー・レナー、ロバート・パトリック

評価:9 out of 10.

 

【あらすじ】

アメリカ人ジャーナリスト、Gary Webbに関する実話を元にした作品。

 

ネタバレあらすじ&感想。Spoiler Alert!

【感想】

1990年代半ば。カリフォルニア州サンノゼ地方紙の記者であったゲイリー(ジェレミー・レナー)は、CIAが南米からの大量コカイン密輸を黙認し、ドラッグで得た資金を、ニカラグアのゲリラ軍への武器援助資金にしていたという内部資料を手に入れる。

 

ニカラグアの刑務所を訪れ、南米側の証人から話を聞き、実際に密輸をしていたパイロットからも裏を取ったゲイリーは、CIAとコカイン密輸、ニカラグアの反乱軍の内情を告発する、”Dark Alliance” という記事を発表する。カリフォルニア州南部やその他の都市で大問題となっていたコカイン乱用の一端を政府が担っていたという告発は、世論を揺るがす大スクープとなった。

 

ゲイリーのスクープに湧いたサンノゼ・マーキュリー紙であったが、他の全国紙からの一斉批判にあい、社内でゲイリーは孤立してしまう。有力紙はCIAとコカインの関係を追及することはなく、ゲイリーの記事が匿名のソースを用いていた事や、記事の細かいあら探しに終始し、ついにはゲイリーの私生活まで暴き、ゲイリー個人の信用を失墜させることで記事自体の信憑性を落とそうとする。また、CIAもゲイリーとコンタクトを取った人々に接触し、ゲイリーと会った事自体を否定させる。

 

こうして組織ぐるみの隠蔽工作にあい、記事はゲイリーの捏造だったのでは・・とまで疑われてしまう。クパチーノ地方事務所に左遷されたゲイリーは、サンノゼ・マーキュリー紙がゲイリーの記事に対する訂正記事を出した事で辞職し、1人で真相を明らかにする決意をしたのだが、彼はその後ジャーナリストとして生計を立てることは出来なかった。

 

数年後、さらなる内部資料が公表され、CIAとコカイン密輸の関係が明らかになったものの、ちょうどクリントン大統領とモニカ・ルインスキーさんの不倫問題の大騒動と重なり、メディアがこの問題を報道することは殆ど無かった。

 

2004年、ゲイリーは頭部に2発の銃弾を受け死亡した状態で発見される。遺書があったために自殺とされた。

 

あらすじここまで。

 

本当の事を明らかにした者が失職し、当り障りのない記事を書いた者が生き残れるとはやり切れないこと。そして自殺で自分の頭に二発銃弾を当てる事が可能なのだろうか。サンノゼ・マーキュリー紙を退職した後、Dark Allianceをまとめた本を出版したものの、記者として生活するほどの収入を得ることは出来ず、非常に悩んでいたらしいが、国家ぐるみで1人のジャーナリストを死に追いやったとしか思えない。

 

主要な全国紙がCIAとコカイン密輸という真相を追求することなく、ゲイリーの記事のあら探しをしたのは、無名の地方紙の大スクープを快く思っていなかったからではないかとも思う。また、有名新聞の記者は政府やCIAの内部の者と懇意にしており、彼らが言う事を真実として記事にしてしまったからではないか。

 

国の秘密を守るために、いとも簡単に個人の生活が破壊される可能性があるという事実を目の当たりにし、空恐ろしい気持ちになる作品だった。

 

日本での公開は未定。アメリカでも大きなチェーン系映画館では上映されておらず、観客動員数もあまり多くないのではないかと。重い内容だったけれども見応えのある作品でした。

 

 

カテゴリー: 映画 タグ: , パーマリンク

コメントを残す