南アフリカ Langaタウンシップツアー

南アフリカに到着し、市街地に入るまでの道沿いにたくさんの小屋を見かけました。豪邸立ち並ぶ海岸沿いとは対照的な風景です。タウンシップと呼ばれる地域を見学するツアーがあったので参加しました。

 

私の他に参加者はヨハネスブルグ在住、元ジャーナリストのアナマリーさん73歳。南アフリカの政治や歴史に詳しく、ガイドが2人いるような贅沢なツアーでした。ガイドさんはこれから訪れるLanga出身の男性。現在もLanga在住だそうです。約5万人が住むLangaの第一言語はXhosa(コサと聞こえました)、学校で英語を習うとのことで、流暢な英語を離されるのですがworkがワックッと発音されたりと独特のアクセントがありました。

 

Langa地区は1927年に設立され、南アフリカで最も古いタウンシップの一つだそうです。1900年台初頭、政府が農村の家畜1頭あたりにつき税金を課したため、収入を得るため東ケープ州から男性たちが列車に乗ってCapetownにやってきたそうです。男性たちは身分証明証を与えられ、3人一部屋の小屋に住まわされるようになったのがタウンシップの始まりだったそうです。この身分証明証は3ヶ月更新で、同じ雇用主の元で10年、違う雇用主でも合計15年勤めれば終身の身分証明証となったそうですが、身分証明証を携帯していなければ逮捕され罰金を課されたり東ケープ州へ送り返されたりしたそうです。

 

人々が割り当てられた家は99年間賃貸を払えば所有する事が出来るルールでしたが、例えば父親が60年間家賃を払った後に亡くなっても、息子がその期間を引き継ぐことは出来ず、また1年目からスタートするため、実際は家を所有することは出来なかったそうです。

 

今も当時の建物に住んでいる人々がいて、部屋の中を見学することができました。6畳ほどの部屋にシングルベッドが3つ並んでおり、1ベッドにつき賃貸料20ランド/月(約180円)だそうです。ただし1ベッド1人ではなく、1家族で1ベッドを使用し、子供達は数家族まとまって台所に雑魚寝しているそうです。ガイドさんもそのような環境で育ったらしいのですが、周りも皆そうなので、自分たちが貧乏とは気付かず、たくさんの子供達で寝泊まりして楽しかったそうです・・・。私たちが見学した部屋には普通にゴキブリがいました。しかも栄養不足なのか細くて色も薄い茶色だったのが切なかったです・・。

 

Langa room

Langa Dining room
ガイドさん。子供たちが雑魚寝する台所兼共用リビングルーム。

 

プライバシーが欲しい、または満員で1ベッドさえ借りられなかった人々が周囲にTin Houseと呼ばれるトタン屋根の掘っ建て小屋を建てるそうです。もちろん違法なのですが、小屋を立てて48時間以内に政府によって撤去されなければそこに住む権利が発生するそうです。水は無料、電気は前払い方式で、雨が降ると屋根や床から浸水します。トイレは工事現場にあるような仮設トイレが並んでいました。

Langa Tin house

政府は古い建物を取り壊し、新しいアパートを建てているのですが、新しい建物は1家族につき2ベッドルームと広くなるため、1部屋に3家族が押し込められていた元の建物の住人全てが写ることが出来ず、ほかの場所を探さざるを得ない人々もいるそうです。また、せっかく新しいアパートを割り当てられても元の掘建て小屋に戻り、新しいアパートを違法で賃貸に出して現金収入を得る手立てにする人々も後を絶たないとのことでした。

 

Langaの人々は東ケープ州出身の方が多く、近所のつながりが強いそうです。先祖を大事にし、事あるごとにシロヤギを生贄にするため、例えお金がたまって良い地区に引越せる余裕ができても、このような慣習の違いから新しい地域に溶け込めず、Langa地域に残る人も多いそうです。Langa地区の人々にとって本当のHomeは東ケープ州の村々だそうで、1年に1回バスで10時間かけて帰るだけであっても、Langaは仮住まいと考えているそうです。Langaで亡くなると遺体は東ケープ州まで運んで埋葬するそうです。その費用を出し合う互助会もあり、同郷の人々が毎月積み立てをしているのだとか。

 

住民の多くは、12ランドの運賃を払い、乗合バスに乗ってCapetownへ働きに出ます。Langaのunemployment率は30%超。不景気のため高卒では仕事が見つからないそうですが、奨学金を得て大学に進学出来る人は限られています。そのため、コミュニティでは工芸、アートを子供達に教え、過程終了後には修了証を出して自営を始められるようサポートしているそうです。

 

Langaのスラム地区のすぐ近くには立派な一戸建の家々もあり、Langa出身の学校の先生やドクターが住んでいるそうです。

 

6畳の部屋に3家族や掘建て小屋など想像を絶する貧乏さですが、何故か悲壮感はありませんでした。Langa在住のガイドさんも楽観的で、本当の家は東ケープ州の村のほうだし、年を取ってから帰れば何とかなる。今はケープタウンでお金を稼ぐと割り切っているようでした。

 

ガイドさんの話によるとここまで貧乏でも、いわゆる生活保護のようなものはないらしく、収入が3000ランド/月(3万円前後)以下なら無料の家が割り当てられるようですが、お金の補助はないそうです。両親が無職の子供へのチャイルドサポート、60歳以上の人々と障がいのある方への補助はあるそうです。

 

雨風を凌ぐ屋根があって、水は無料、そして同郷コミュニティがある。食うには困らないというレベルなのでしょうが、住民の方々が楽天的なのが印象的でした。

 

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