The Tattooist of Auschwitz (2018)
- Narrated by: Richard Armitage
時間:7時間25分
発音: イギリス英語
評価: 4.5 out of 5
【あらすじ】
1942年4月、スロバキア系ユダヤ人のLale Sokolovはナチスによりアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所に連行された。数カ国語を流暢に話すことが出来たことから、ラーレは収容されるユダヤ人の腕に番号を入墨するTätowierer(ドイツ語でTatooist)に任命される。
1942年7月、34902番と割り振られた若い女性と出会い恋に落ちたラーレは絶対に生き延びて彼女と結婚すると誓ったのだった。
【感想】
最後に後書きを読むまでフィクションだと思っていたが、アウシュヴィッツを生き延びたTatooistの実話に基づいたストーリーだったらしい。すいぶんと”盛った”あらすじだと感じた恐ろしすぎる出来事が実際に過去に起こったと知り、後書きを読みながら苦しくなってしまった。
ナチスに任命されたTatooistとして、ユダヤ人たちに強制収容番号を入墨するラーレ。同胞を裏切るような行為だが、拒否すればその場で殺されてしまう。絶対に生き延びて収容所を出ると決意した彼は敵に逆らわず、Tatooistとしての仕事を淡々とこなしていく。仕方なくやっていることなのに、仲間たちからはナチスの協力者と思われてしまうことが心苦しく、Tatooistとしての特権やコネを活かして食べ物や医療品を入手し、困っている囚人たちに分け与えていく。
この作品が実話ではなくフィクションであったとするならば、主人公はナチスと徹底的に、果敢に戦いヒーローとして勝利を収めることが出来たかもしれない。しかし現実の世界では、ラーレのようにナチスとは目を合わせず言われたことだけを忠実にこなしていかないと、無意味に殺されてしまうだけ。実際にほんの些細なきっかけで大勢の人々が殺されている。どんな屈辱にも耐えて生き延びることも、力のない一般市民にとっては立派な「戦い」なのだと知った。
ここからはネタバレ。
現代を生きる私達は第二次世界大戦は1945年に終わり、ナチスが敗退することを知っているが、当時アウシュビッツ収容所で暮らした人々にとっては、戦争はいつ終わるか予想もつかず、生きる希望を持ち続けることさえも難しかったはず。ラーレは後年 ”If you wake up in the morning, it is a good day.”と言っていたそうで、翌日生きて目覚めることが当たり前ではない世界が終わって本当に良かったと思った。
リチャード・アーミティッジの朗読も本当に素晴らしくて本の世界観に没入出来た。俳優さんの朗読は、声は良いのだけど読み方が早すぎたり、上手に読み上げているだけでキャラクターの演じ分けがイマイチだったりすることも多い。リチャード・アーミティッジ朗読は収容所内のフランス人、ドイツ人、東欧系の人々の話す英語の特徴がさり気なく、でも分かりやすく語り分けられていた。強制収容された人々の抑圧された感情や静かな反抗心の表現も上手くて感動的だった。是非他の朗読作品も聞こうと思う。
YL: 7.5
語数:68,878語 Word Counters調べ