洋書のアーカイブ
【洋書】Tenet スクリプト本
- 2020/11/22 7:24 PM
- 洋書
Tenet (2020)
映画Tenetの“教科書”ともいうべきスクリプト本。台詞だけではなくト書きもあり、後半はフリーポート回転扉付近の絵コンテ入り。
プリヤの台詞は本編では結構カットされているんだけど、このスクリプトを読むと世界観を説明している台詞が多いので背景情報の理解を深めるのに役立った。敢えて説明台詞をカットしてあるということは、全部言葉で言わせてしまうと冗長なイメージになってしまうのかもしれない。
作品については「説明不足」だとか、「観客に分からせる努力を放棄してしている」などという批評も見たけれど、役者さんの表情や目線などで行間を想像する自由を与えられているところが特にこの作品の好きなところだし、何回見ても新たな発見があるとことも良い。以前ノーラン監督のインタビューを見た時に、“監督としての自分の強い意見は勿論持っている。その上で相手にもどう思う?と聞いて色々な議論があって然るべきだ。ただ、自分が持論を述べるとそればかりがマスコミに取り上げられて正解のようになってしまう。だから作品の説明はしない”というような事を言っていた。観客も自分なりの解釈を持っていて良いのだ、というのが嬉しいし、今回は多くの人が同時期にテネットを観たことで色々と意見交換出来たことも嬉しかった。
映画を観た人にはオススメの本。本から読むと全然映像が浮かばないと思います・・。
YL:7くらい
語数:72,000語(概算)
洋書選びの際に参考にしているサイト
- 2016/08/29 7:36 PM
- 洋書
昨夜、ののさん 主催のSkypeトークで、洋書選びの参考にしているサイトの話が出ました。備忘録として教えてもらったサイトと私が参考にしているサイトを記録しておきます。
BookBub
まずはののさんに教えてもらったのがBookBubというサイト。こちらはメールアドレスを登録し、自分がよく読むジャンル、お気に入りの作者を登録しておくと、毎日オススメ本のニュースレターが届くという仕組みだそうです。このサイトの良いところは、セール中、または無料の本がリストアップされているという点でしょうか。たくさん読みたいのでセール品狙いで!という時に重宝しそうなサイトです。
Literary Hub
私が時々参考にしているのはLiterary Hub というサイト。こちらはソースとなっている大手の新聞社や雑誌の間で1冊の本が最低3回紹介されたら、その評価を平均してA+やB−などのグレードをつけるという仕組み。各雑誌の書評をチェックしなくても、今話題となっている本とその評価が分かるのは便利です。ただ、プロの書評家による評価のせいか、こちらで高評価となっている本がAudibleやGoodreadsでは酷評されている事もあります。私はこちらのサイトで本の目星をつけて、Audibleで皆の意見を参考にして実際に読む本を決めています。
AmazonのBest books of the year so far
今年のベストが決まるまで待ちきれない!ということで、こちらはAmazonのエディターたちが選ぶ「今年度これまで出版された中のベスト20 。全体のベストだけではなく、ジャンル毎に今年これまでのベストカテゴリがあるのが良い感じです。
また、Amazonには、「一生のうちに読むべき100冊」リストシリーズもあります。一生どころか何回か生まれ変わらなければ消化出来そうにありません。
100 books to read in a lifetime
100 Leadership and Success book to read in a lifetime
100 Mysteries and Thrillers to read in a lifetime
100 Science Fiction and Fantasy books to read in a lifetime
GoodreadsのListopia
こちらは読者投票タイプ。20世紀のベスト本、映画化してほしい本、ブッククラブに最適な本等など。リストをランダムに眺めるだけでも楽しいです。
私がよく本選びの参考にしているのは、北欧ミステリリストやエピック・ファンタジーリスト。その他にもリストピアページ内で思いついたキーワードで検索すると、読者が選んだニッチなカテゴリのベスト本もわかります。
本屋さんサイトの売れ筋
Barnes and Nobleのベストセラー100とか。アメリカの本屋さんは店内にカフェが併設されていて、コーヒーとインクの混ざり合った独特のいい匂いがするところがあるのです。オンラインでの本選びには全く関係ありませんが、大手の本屋さんは良かったなぁ・・・と思い出に浸りながらサイトを眺めています。
AmazonやGoodreadsの読みたい本リストには、読みたいけれど読みきれない本が山のように積まれているのに何故本探しを続けるのか・・・。自分でも謎です。でも本にはそれぞれの「読むタイミング」があって、話題性だけではなく今の気分や巡り合わせがあるんですよね。そして「今読むべき本」に当たった時のなんとも言えない嬉しい感覚を味わうために、今日もせっせと積ん読リストを増やしているのだと思います・・・。
【今日の一枚】
Wineryにて。パラソルの下でワインを飲みながら読書したい!
2015年洋書100冊チャレンジ
- 2015/12/21 11:17 PM
- 洋書
2015年の目標、洋書100冊読書を達成することが出来ました。
合計105冊、42,948ページです。105冊のうち、90冊がオーディオブック、15冊が読書でした。平均すると1日117ページ、語数は読書が74万9086語、オーディオブックが1105万6440語です。
今年読んだなかで一番短かった本は192ページ、長かった本は932ページ、1冊の平均は413ページでした。
goodreadsに本を登録しておくと、年末になると”See Your Year in Books!”という項目がHome画面トップに現れます。これをクリックすると、上記のように読んだ本の合計やページ数、平均評価、人気の本などが表示されます。
だいたい無理なく読める洋書数は年50冊なので、自分のペースを大幅に超えた読書チャレンジでした。2012年ごろから徐々に目で読む読書からオーディオブックにシフトしていき、今では大部分がオーディオブックです。オーディオブックなら忙しくても読書ペースを落とさなくてすむので、オーディオブック読書が出来るようになって本当に良かったです。
洋書100冊リーディングに挑戦して良かったのは、思いがけない良書との出会いがあったことでした。読書目標を年に50冊から100冊に増やしたことで、自分の好み以外でも、ふと目についた本を読んでみようかという気持ちの余裕が出てきます。今年はこれまでにあまり読まなかったSFやミステリーにも挑戦出来た一年でした。特に北欧ミステリーのお気に入り、Department Qシリーズに出会えたのが大きな収穫でした。
今年洋書を105冊読んだことで英語力が大幅にアップしたかというと、あまり実感はありません。本を読むたびに面白いように新しい語彙を吸収していった時期も過ぎ、今は読み続けることで現状維持している段階かもしれません。ただ、色々な表現に触れることで、無意識ながらもアウトプットの幅が広がっていると感じています。
洋書100冊チャレンジの反省点としては、洋書多聴多読以外の事が出来なかった事です。3月くらいまでは、Podcastを聞いたり、ドラマを観たり、ライティングをしたりと偏りのない勉強を心がけていたのですが、途中から余裕が無くなってしまいました。読んだ感想も全部書き留めておきたかったのですが、そんな余裕もなく・・。読書感想は来年に持ち越しです。来年は洋書に偏らず、アウトプットを心がけたいと思います。
【2015年読書】YLと語数は概算です。
Alan Turing: The Enigma: The Book That Inspired the Film “The Imitation Game” YL9、175,000語
The Power of Habit: Why We Do What We Do in Life and Business YL6.5、90,000語
Alex (The Camille Verhoeven Trilogy Book 2) (English Edition) YL8, 87500語
Undeniable: Evolution and the Science of Creation YL8.5, 80,000語
Grandma Gatewood’s Walk: The Inspiring Story of the Woman Who Saved the Appalachian Trail YL7, 62,500語
Ham on Rye: A Novel YL6.5, 75,000語
Getting Genki in Japan YL6, 36,000語
Do Androids Dream Of Electric Sheep? (S.F. MASTERWORKS) (English Edition) YL8, 62,500語
The Man in the High Castle YL8, 80,586語
【2015年オーディオブック】
Theft of Swords (Riyria Revelations) YL7.5, 200,000語
Rise of Empire (Riyria Revelations) YL8, 230,000語
Heir of Novron (The Riyria Revelations) YL8, 270,000語
Firefight: A Reckoners Novel YL7.5,100,000語
Furies of Calderon (Codex Alera) YL7, 180,000語
Academ’s Fury (Codex Alera) YL7, 180,000語
Cursor’s Fury: The Codex Alera: Book Three YL7, 180,000語
Captain’s Fury: The Codex Alera: Book Four YL7, 170,000語
Princeps’ Fury: The Codex Alera: Book Five YL7, 160,000語
The Hitchhiker’s Guide to the Galaxy YL7, 54,000語
Dark Places (EXP): A Novel YL7, 120,000語
Ready Player One: A Novel YL7.5, 135,000語
Tune In Tokyo:The Gaijin Diaries YL7, 72,000語
The Golem and the Jinni (P.S.) YL8, 170,000語
The Girl on the Train YL7, 90,000語
The Rithmatist YL7.5, 90,000語
Hyperion (Hyperion Cantos, Book 1) YL8, 180,000語
Irène (Verhoeven Trilogy Book 1) (English Edition) YL7.5, 102,500語
Daemon (English Edition) YL7.5, 150,000語
Freedom (TM) (Daemon) YL7.5, 120,000語
Odd Thomas YL8.2, 92,000語
The Bone Collector: Lincoln Rhyme Book 1 YL8, 111,167語
Deal Breaker (Myron Bolitar) YL7.5, 77,400語
A Clean Kill in Tokyo (Previously Published as Rain Fall) (A John Rain Novel) (English Edition) YL7.5, 78,300語
The Buried Giant (Vintage International) YL8, 94,400語
1356 YL7.5, 108,000語
The Emperor’s Blades: Book One YL7.5, 162,000語
The Girl with All the Gifts YL8, 111,700語
Zero Day: 1 (John Puller Series) YL7.5, 118,000語
Red Rising: Red Rising Trilogy 1 (The Red Rising Trilogy) YL7.5, 145,000語
Golden Son (The Red Rising Trilogy, Book 2) YL7.5, 170,000語
High-Rise (Flamingo Modern Classic) YL7.5, 58,500語
The Woods YL7.5, 112,000語
What If? (International edition): Serious Scientific Answers to Absurd Hypothetical Questions YL7.5, 59,400語
So You’ve Been Publicly Shamed YL7, 63,000語
Elantris (English Edition) YL8, 247,000語
Off to Be the Wizard (Magic 2.0 Book 1) (English Edition) YL6, 90,000語
Harvest YL8, 112,000語
Wonder YL7, 72,000語
The Dragons of Dorcastle (The Pillars of Reality Book 1) (English Edition) YL7, 100,000語
The Strain: Book One of the Strain Trilogy YL7.5, 115,000語
The Nightingale YL7.5, 150,000語
The Gunslinger (English Edition) YL8, 70,000語
The Dark Tower II: The Drawing Of The Three: The Drawing of the Three: Drawing of the Three Bk. 2 YL8, 110,000語
Jurassic Park: A Novel YL7.5, 124,820語
An Ember in the Ashes (An Ember in the Ashes, Book 1) YL7, 130,000語
Trauma: A Novel YL8, 99,000語
Elon Musk: Tesla, SpaceX, and the Quest for a Fantastic Future YL8, 115,000語
The Shadow Of What Was Lost (The Licanius Trilogy Book 1) YL7, 220,000語
Finders Keepers: The Bill Hodges Trilogy 2 YL8, 117,000語
The Real Doctor Will See You Shortly: A Physician’s First Year YL8, 72,000語
The Crown Tower (The Riyria Chronicles) YL8, 110,000語
Leviathan Wakes (The Expanse) YL7, 170,000語
The Lost Fleet: Dauntless YL7, 90,000語
Red: A History of the Redhead YL8, 60,000語
Hannibal Rising (Hannibal Lecter) YL7.5, 57,000語
Age of Iron (Iron Age) YL7, 130,000語
Fahrenheit 451 YL8.1, 50,000語
I Am Pilgrim YL7.5, 200,000語
Never Let Me Go YL7, 96096語
Dead Until Dark: A Sookie Stackhouse Novel YL7, 90,000語
Armada: A Novel YL7, 100,000語
A Man Called Ove YL7, 81,000語
Dark Secrets YL7.5, 120,000語
The Keeper of Lost Causes: Department Q 1 YL8, 130,000語
The Absent One: A Department Q Novel (Department Q Series) YL8, 120,000語
The Redbreast YL8, 144,000語
Lord of All Things YL7.5, 189,000語
A Conspiracy of Faith: A Department Q Novel (Department Q Series) YL8, 135,000語
The Knife of Never Letting Go (Chaos Walking) YL7, 100,000語
The First Fifteen Lives of Harry August YL8, 110,000語
Nemesis: A Harry Hole thriller (Oslo Sequence 2) YL7.5, 117,000語
The Girl in the Spider’s Web (Millennium series Book 4) YL8, 110,000語
The Ask and the Answer YL7, 108,000語
Packing for Mars: The Curious Science of Life in the Void YL7.5, 90,000語
The Devil’s Star: A Harry Hole thriller (Oslo Sequence 3) YL7.5, 126,000語
Proof: The Science of Booze YL8.5, 72,000語
The Purity of Vengeance: A Department Q Novel YL8, 126,000語
The Godfather YL7, 167,000語
Working Stiff: Two Years, 262 Bodies, and the Making of a Medical Examiner (English Edition) YL8, 84,320語
Catch-22 YL7.5, 168,640語
Flowers for Algernon YL7.5, 83,309語
Assassin’s Creed the Renaissance Codex Book 1 YL6, 153,760語
The White Tree (The Cycle of Arawn Book 1) YL7, 132,060語
Wildflower YL7.5, 89,280語
The Bazaar of Bad Dreams: Stories YL8, 158,720語
The Andromeda Strain YL8.5, 119,040語
Chasing the Scream: The First and Last Days of the War on Drugs YL8.5, 124,000語
The Waste Lands: (The Dark Tower #3)(Revised Edition) YL7, 173,849語
The Last Kingdom (The Last Kingdom Series) YL7.5, 110,379語
The Marco Effect: A Department Q Novel YL8, 158,720語
The Curious Incident of the Dog in the Night-Time: A Novel YL7, 70,060語
The Story of the Human Body: Evolution, Health, and Disease YL8.5, 148,800語
Carrie YL7.5, 94,240語
A Place Called Freedom YL7.5, 143,840語
I Hunt Killers (Jasper Dent 1) YL7.5, 87,053語
2015年のベストは順不同で
Elon Musk: Tesla, SpaceX, and the Quest for a Fantastic Future
Finders Keepers: The Bill Hodges Trilogy 2 、
Chasing the Scream: The First and Last Days of the War on Drugs
Working Stiff: Two Years, 262 Bodies, and the Making of a Medical Examiner (English Edition)
Department Qシリーズ全部!
でした。
【洋書】Alex/その女アレックス
- 2015/03/18 11:13 PM
- 洋書
【あらすじ】
おまえが死ぬのを見たい――男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが……。
ここまでは序章にすぎない。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、慟哭と驚愕へと突進する。(アマゾンより抜粋)
【感想】
日本で大層な評判となっているだけあって、すごく面白かったです!!!肝が座った女性が主人公の話が大好き。何を言ってもネタバレになるので大っぴらに語れないのが残念ですが…。
どんでん返しを期待して読んだ人のなかには、ガッカリしたという感想もチラホラ見かけたのですが、この本の良さはどんでん返しにあるのではなく、犯人と一緒に事件を追っていく事が出来るということだと思うのです。アレックスが仕掛けた一連の事件に対して警察がどう反応するのか、自らが審判を待っているかのようにドキドキしました。truthよりもjusticeというセリフには激しく納得です。
一作目のIreneを読まなくても十分楽しめるとは思いますが、1作目を読んでいたほうが、主人公Camilleが負ったトラウマの深さが分かるので良いと思います。画家であるお母さんへの思い入れの強さも分かりますし。
Camille率いる捜査陣も相変わらず個性的。今回主要メンバーに加わったArmandのドケチぶりには参りました。読んでいるこちらが恥ずかしくなるほどの倹約ぶり。このご時世にホームレスでもないのにシケモクを集める人がいるとは・・・。それらのドケチエピソードの数々があったからこそ、芸術への傾倒ぶりがますます際立ったのだと思いました。
なぜかオーディオブック版はデンマーク語しかなかったので、Kindle版で読みました。内容とは関係ないのだけれど、この作品、やたらとセミコロンが多いのです。セミコロンの使い方を思う存分確認出来た本でした。
YL:7.5
語数:99,000語(概算)
Book Review: Alex
Plot:
“I’m going to watch you die, you filthy whore,” the man said. An attractive young woman was snatched off a street in Paris; she was confined in an undersized cage in an abandoned warehouse. Commandant Camille Verhoeven and his team had no clues about finding the woman until a series of brutal murders presumably committed by a mysterious woman started.
My Thoughts: Spoiler Alert!! ネタバレ感想
I knew that Alex by Pierre Lemaitre received critical acclaim internationally and I enjoyed its prequel, Irene, but this book was beyond my expectations. The book starts with an abduction of a beautiful woman; however, readers soon realize that the woman, Alex, is not a mere victim. She had a reason to be punished by the perpetrator. But what was the reason?
Following Alex’s narrow escape from the cage, she goes on a killing spree; it looks completely random, and the motive is not revealed until the very end. Alex is a serial killer; but her loneliness and the determination to kill felt so sad that I sympathized with her. I couldn’t help but hope that she would never get caught.
Commandant Camille Verhoeven and his team is another reason that makes this book unique; Commandant Camille, a man with a diminutive stature of only four feet eleven inches, was traumatized by a tragedy that fell upon his family a few years earlier. This abduction case was a harsh reminder of what happened to his wife, Irene. His second in command, Louis, shares the guilt with Camille, and their relationship seems to have changed since the tragic event. Armand, one of the detectives, is capable of finding anything, but he is a cadger; he is embarrassingly stingy, but his dedication to art is remarkable. He skimps on everything but art.
The ending is brilliant. I couldn’t agree more when one of the characters said, “As far as we’re concerned, what’s important is not truth, it’s justice.” This ending was what I hoped for, albeit a sad one. This book was dark, sad, and disturbing, absolutely the kind I like the most. I’m really looking forward to the third book in this series, Camille, coming out in May.
【今日の一枚】
Grackle/オオクロムクドリモドキ?
【多読】Alan Turing: The Enigma: The Book That Inspired the Film The Imitation Game
- 2015/02/06 11:28 PM
- 洋書
Alan Turing: The Enigma: The Book That Inspired the Film The Imitation Game
【あらすじ】
第2次世界大戦時、ドイツ軍の暗号機エニグマの暗号解読に成功し、連合国軍に勝機をもたらしたイギリスの数学者アラン・チューリングの伝記。
【感想】映画の感想はコチラ。
難しかった。息も絶え絶えになりながら読んだ、というか力及ばず途中で息絶えてしまうかと思った…。
映画のThe Imitation Gameを観て、エニグマの解読方法を詳しく知りたいと思って原書を読んだのだが、私の理解を越えていて謎は謎のまま。理解出来たのは、シーザーの時代に用いられていた、A→D、B→Eとアルファベットをずらしていく方法まで。ローターを組み合わせて矛盾を検出して・・というあたりは詳しく説明されているものの、さっぱり分からなかった。
この本を読んだことで、映画の脚本がどれほど優れていたかが分かった。映画では、エニグマ解読とアランの少年時代にきっちりフォーカスが当てられている。本ではアランの論文の説明や、当時の学説、コンピューターの概念などが詳細に書かれており、話が広がりすぎて非常に読みにくかった。その反面、映画では殆ど触れられなかったエニグマ解読以降のコンピュータープログラミングに携わった話なども知ることが出来たのは良かった。
映画ではベネディクト・カンバーバッチ演じるアランの奇人変人ぶりが目立ったが、本人も本当にあんな感じだったらしい。花粉症対策のためにガスマスク装着で通勤していたというエピソードも本当。学者仲間や本当に親しい人に対してはちゃんとしていたものの、学者としての能力はないがマネージメント能力に優れている上司を小馬鹿にしたり、知っている人とすれ違っても挨拶をはぶいたり。。。
映画のほうはかなりドラマタイズされていたようで、かつての婚約者ジョアン・クラークも本ではいつの間にか登場しており、映画のような演出は皆無。仲間たちとの軋轢も映画ほどではなかったのでは?と思った。これほど淡々と事実が書かれているだけの本から、あれだけのドラマを創りあげたのは素晴らしい。
アランの死についても謎が残った。映画ではアランの自殺の原因は同性愛の罪で逮捕され、化学的去勢を受けたため、という描き方だったが、それが原因なのかは本を読んでも判断出来なかった。逮捕されたのは自殺の2年前だし、ホルモン療法が終了したのも1年前。アラン自身はオープンなゲイで、周囲にもゲイである事を隠すことなく、魅力的な男性がいれば積極的にアプローチしていた模様。それでも兄と母へのカミングアウトは逮捕後だった。母はアランを責めることなく受け入れたようだし、同性愛者であることを恥じ入っていた様子も感じられない。自殺の前日まで全く普通に仕事をしており、来週以降の予定なども入れていたらしい。青酸カリりんごを齧って自殺したとされているが、りんご自体は調べられなかったようだ。自殺とされた現場にメモもなかったし、親しい人へのメッセージや自殺の素振りなども全くなかったものの、死ぬ前に遺産分割についての遺書は更新していたらしい。母が言うように冶金のために用いたシアン化カリウムがついた手でうっかり食べ物を触ったための事故なのか、軍の機密を知りすぎていたための他殺なのか・・・。
最後まで”事故”説を信じていたアランの母親は、1976年に93歳で亡くなるまでアランの戦時中の功績とコンピューター開発の詳細については機密につき、知らされていなかったようだ。ただ、息子が何か偉業を成し遂げたという事は感じていたらしく、”将来伝記を書く人のために”と、アランの学生時代からの書簡などを取っておいたらしい。そしてアランの死後、母親自身がアランの伝記を書いたとのこと。学生レポートのような出来だったらしいが、何も知らされないまま息子を信じた母の気持ちを思うと悲しかった。1976年にBBCで戦時中のエニグマ暗号解読に関するドキュメンタリーが製作され、この本の筆者がアランについての調査を始めたのがその年以降らしいので、後もう少し長生きしていれば、息子の功績を知ることが出来たのに・・と残念。
肝心な暗号解読、コンピューターの仕組みについてはよく理解できなかったものの、映画を観て疑問に思ったことが解決したので読んで良かったと思う。映画より先にこの本を読んでいたら確実に挫折していたはず…。
YL:9以上
語数:140,000語(概算)75%以降は訳注でした。
Alan Turing: The Enigma: The Book That Inspired the Film The Imitation Game
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