By David Lynch, Kristine McKenna
Narrated by David Lynch, Kristine McKenna
時間:15時間47分
発音:アメリカ英語
評価:星5
2015年1月15日にデヴィッド・リンチ監督の訃報を知り、ドキュメンタリー「The Art Life」と、こちらのオーディオブック「Room to Dream」を聞きました。
Room to Dream は、Kristine McKenna氏が当時の資料や知人たちのインタビューをまとめた自伝を読みあげ、次の章でリンチ監督がその当時の思い出を自由に語るという珍しい形式のオーディオブックです。リンチ監督の幼少期から、2017年ツインピークスリミテッドシリーズまでが語られています。
子供の頃にツイン・ピークスにハマり、「ローラ・パーマーの日記」という本まで読みました。今回伝記を読み、あれは監督の長女さんが書いた本であることを知りました。
今取り組んでいる、「死ぬまでに観たい映画1001本」には、「イレイザーヘッド」「エレファント・マン」「ブルーベルベット」の3本が入っています。3本とも素晴らしい作品ですが、特に感銘を受けたのはエレファント・マンでした。ストーリーに感動するのは当たり前なのですが、とにかく映像が素晴らしかった。同じように世界を見ていても、こんなにも見え方、捉え方が違うのかと。Room to Dream では、エレファント・マンを監督することになった時、イレイザーヘッドしか代表作がなく、しかもイギリスでは全く知られていないため、“田舎者のアメリカ人“としてあからさまに冷遇するスタッフもいたそうです。デヴィッド・リンチ監督は、この作品に限らず、大声を出して怒ったり不機嫌な態度を取ることは全くなかったそうです。主演のアンソニー・ホプキンズの態度は特に悪かったようで、監督の演技指示に従わなかった様子が書かれていました。請われて編集前の映像を数人に見せた時などは。「酷すぎる。こんな作品に関わったと思われたくないからクレジットから名前を外してくれ」と言った人までいたらしいのです。エレファントマンは世界各国でヒットし、配給収入は23億円余りに上ったそうですが、完成前の試写で、それほど出来が悪かったということがあり得るのでしょうか。かなりの逆境を乗り越えての作品だったことがうかがえます。
イレイザーヘッドを初めて見た時は、ストーリーの異質さのみに注目し、“いまいち分からなかった“という感想を抱いてしまったのですが、学生プロジェクトとして、何もかもが手探りで撮影に4年、ポストプロダクションに1年かかった様子を知った今の状態で、ぜひもう一度見直したくなりました。商業的な成功の見込みもないまま4年間も自主映画製作に没頭していたため、ある日父と弟が「子供も生まれたんだし、映画制作はやめてマトモに働きなさい」と説得に来たエピソードもありました。製作中に妻は子供を連れて出て行ってしまいますが、リンチ監督からは焦りや不安は感じられず、創作に没頭する喜びのみが感じられて圧倒されました。
なぜリンチ監督作品に惹かれるのか。実生活では“不安“をなるべくなくしたいと思っているのに、監督が描く不安感や、物事の二面性に引き付けられてしまうのです。。頭の中のアイデアを鮮明に形に出来る表現力も素晴らしいです。亡くなってしまったのはとても残念でしたが、訃報をきっかけに、監督のアートライフや作品製作の裏側を詳しく知ることができたのは良かったです。
YL:7くらい
語数:139,500語(概算)