【オーディオブック】Babel(2022)

Babel(2022)

時間:21 時間 46分

発音:イギリス英語

評価:3/5

【ネタバレ感想】

1828年広東。コレラ大流行で唯一の肉親である母を失った少年は、オックスフォード教授に命を救われ、教授の被保護者として渡英する。ロビン・スウィフトと改名した少年は、教授の元で言語学と翻訳を叩き込まれた後、オックスフォード大学Royal Institute of Translation、通称Babelに入学する。

 

この世界では翻訳が魔法として使われている。銀の棒の両側に同じ意味の異なる言語を記すと、二つの言語の意味の微妙な違いから魔力が生まれるのだ。魔法の使用者は、銀の棒に書かれた二つの言語に精通している必要があり、Babelは数百年以上にわたり、翻訳者を養成し、大英帝国の植民地主義を支えていた。ロビンは新入生3人と親しくなり、Babelに隠された秘密に迫っていく・・という話。

 

翻訳と銀を使った魔法体系が目新しく、途中までは星5だ!面白い!と興奮していたのですが、極端な理想主義が破滅に向かうストーリーに気持ちがついて行かず、結局星3評価でした。副題にもOr the Necessity of Violence: An Arcane History of the Oxford Translators’ Revolution、とありますしね。理不尽な体制を倒すために暴力の必要性は正当化されるのか、がテーマでもあります。

 

いくら大英帝国の植民地主義が酷いとはいえ、主人公たちがやったことはテロ活動であり、罪のない一般人まで巻き添えにしてしまうのは良くない。最後にバベルを壊してしまう展開には具合が悪くなりそうでした。確かにバベルは植民地主義を支えていましたが、数百年にもわたる学問の集大成が学生たちにより一瞬にして破壊されてしまったのには納得がいきませんでした。若さゆえの暴走でしょうか・・・。辛かったです。

 

YL:8−9(概算)

語数:162,656語(概算)

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【オーディオブック】Shoe Dog

Shoe Dog: A Memoir by the Creator of Nike(2016)

時間:13 時間 21分

発音:アメリカ英語

評価:5/5

【あらすじ】

父親から借りた50ドルを元手に、アディダス、プーマを超える
売上げ300億ドルの会社を創り上げた男が、ビジネスと人生のすべてを語る!

1962年晩秋、24歳のあるアメリカ人が日本に降り立った。
彼の名はフィル・ナイト。のちに世界最強のブランドの一つとなる、
ナイキの創業経営者だ。

オニツカという会社がつくるシューズ「タイガー」に惚れ込んでいた彼は、
神戸にあるオニツカのオフィスを訪れ、役員たちに売り込みをする。

自分に、タイガーをアメリカで売らせてほしいと。

スタンフォード大MBA卒のエリートでありながら、なぜあえて靴のビジネスを選んだのか?
しかもかつての敵国、日本の企業と組んでまで。

「日本のシューズをアメリカで売る」。

馬鹿げたアイディアにとりつかれた男の
人生を賭けた挑戦が、このとき始まった! (Amazonより)

 

【感想】

4月7日(金)に公開された映画Airを見る前に読みました。面白かった!映画は1984年、新人だったマイケル・ジョーダンとNIKEのスポンサーシップを結ぶために奮闘する話ですが、こちらの本は、NIKE1962年創業時から1980年IPOするまで。本を読んでいなくても映画は楽しめるのですが、起業の苦労を本人の言葉で読むことが出来て映画がより面白く感じられました。

 

なぜ1962年から1980年までの話なのか、というのは今は残っていない創業時メンバーとの苦労も多かったが、本当に楽しかった時代を語りたかったからのようです。また、かなりの無茶振りをしたにも関わらず、期待に応えてくれ会社の生き残りに多大な貢献をしてくれたメンバーにねぎらいの言葉をかけることもなく、雑に扱ってしまったことを後悔し、創業メンバーのことを皆に知ってほしかったという思いもあるようです。

 

スタンフォード大学MBA卒業後、フィル・ナイトは友達2人と世界旅行に旅立ちます。最初の目的地ハワイを気に入ったため世界旅行は中止。百科事典の訪問セールスをしながらアフターファイブはサーフィン三昧。友達に彼女が出来てハワイに残ることにしたため、フィルは1人で世界旅行を再開します。

 

今後の靴業界は日本の成長が鍵を握るだろう、とMBAの授業で発表した彼は、日本のオニツカタイガー(現アシックス)の靴を輸入販売するため1人で神戸の本社を訪れます。まだ起業していなかったにもかかわらず、すでにブルーリボン社という会社があるように話をでっちあげ、熱意を買われて50ドルで契約を結ぶことに成功します。

 

フィルは、オレゴン大学陸上部時代のコーチであったビル・バウワーマンに声をかけ、2人でブルーリボン社を立ち上げます。バウワーマンは、フィルが学生時代から既成の靴を自ら解体・改良するほど熱心で、何人ものオリンピック選手を育てた人でした。

 

創業から何年も自分の給料を出すことができなかったため、フィルは公認会計士の資格を取り、会計事務所に勤めながら会社の経営をします。創業メンバーは皆強烈な個性の人たちばかりなのですが、一番興味深かったのは、最初の従業員ジェフ・ジョンソン氏です。スタンフォードMBAの知り合いであったジョンソン氏は1965年ブルーリボン社に入社します。10ヶ月で3250足の靴を売ってこい!という不可能に思えた売り上げ目標を1人で達成。彼は相当な筆まめで、高校や大学の陸上チームを訪ねては靴を売り、顧客の情報カードを作成。顧客の誕生日や試合前などにメッセージカードを送り、何百人もの顧客と“文通“状態にあったそうです。ボスのフィルが嫌になるほど彼にも手紙を送りますが、フィルは一切無視し、ジョンソン氏は孤軍奮闘します。この“文通友達”だった顧客の高校生から東海岸でブルーリボン社以外にオニツカタイガーと代理店契約した会社がある、との情報提供を受け、彼はその高校生の自宅を訪問。高校生が自宅に帰ると家族と食卓をともにしていたそうですから、素晴らしいコミニュケーションスキルです。彼は西海岸に最初のナイキ小売店を作ったり、東海岸に拠点を築き、後には靴の開発にも携わっていたそうです。

 

ブルーリボン社から新しい社名に変わる時、フィル・ナイト氏は“ディメンション・シックス“という名を思いつきますが、皆に反対されます。NIKEという名を考えついたのはジョンソン氏で、勝利の女神の名前であること、短くて覚えやすく、成功した企業の名前の特徴(KやXなど強い音を持つ)を捉えていることから決定したそうです。1981年にNIKEが新規株式公開を果たした時、共同経営者のバウワーマン氏は9 millionドル、創業メンバーたちは6 millionドル、フィル・ナイト氏は178millionドルを手にしたそうです。当時の6億ドルは現在の価格で20億円超。苦労が報われて本当に良かったです。

 

今では300億ドル以上の売り上げを持つNIKEですが、1980年頃まで売り上げはどんどん伸びるのに手元に現金が残らない状態でした。靴を発注する→売り上げが入金されるがすぐに発注先や従業員の給料を振り込む→残金ゼロ、の自転車操業だったようです。創業当初に地元に銀行に融資を断られ、事業が軌道に乗り換えた時もキャッシュフローが悪く、貸し倒れのリスクを懸念され、突然融資を打ち切られます。今日にも倒産!という時にかねてから付き合いのあった日本の総合商社日商のビジネスマンが大きなリスクを取り、資金を取り付けます。

 

その日の出来事が克明に記されていて、昔のことながら手に汗握る展開でした。オニツカ、日商など日本との縁も深く、日本がまだいけいけどんどんだった時の興味深いエピソードが満載でした。

 

垂直に落ちるジェットコースターのようにスリリングで、起業の苦労、面白みを一緒に体験できる本でした。翻訳本もありますし、読みやすくておすすめです。

 

 

    

YL:7.5(概算)

語数:100,000語(概算)

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ChatGPTにお薬について聞いてみた

いま流行りのChatGPT。英語学習の未来だ!的に騒がれているのを目にして、単語説明など気軽に試してみたりしていたのですが、まだ完全に信頼してはいけないかも・・という出来事がありました。

 

TwitterでChatGPTでお薬のことを調べると良くない、という発言を見かけたので試してみました。

アダラートCRは、カルシウム拮抗薬の一つで高血圧症、狭心症などに使われる血圧降下薬です。インターネットの他にも薬剤情報書、薬の本などで確実な情報が得られ比較できるので、ChatGPTで「アダラートCRについて教えてください」と質問してみました。

 

一段落目。アダラートCRは中枢神経系刺激薬の一種、とありますがカルシム拮抗薬です。メチルフェニデートを主成分として含有→ニフェジピンの間違いでしょうか。

注意欠陥多動性障害(ADHD)や過敏性腸症候群(IBS)の治療に使用される→高血圧症、狭心症などに用いられます、が正しい。

 

二段落め。CRが徐放剤である、という説明は合っているようです。この段落は正しい。

 

三段落め。処方薬で、用法容量を守りましょうという一般的な説明はOK。主な副作用として挙げられている、不眠、食欲不振、頭痛、吐き気、不安、イライラ、心拍数上昇などは、一段落目の中枢神経系刺激薬の副作用でしょうか。

 

少しの正解と大部分の間違いを巧妙にかけ合わせ、最もらしい答えを出しています。ChatGPTはマンスプレイナー、とThe Battle for Internet Search という記事で読んだのですが、間違ったこと自信たっぷりに説明する様子はまさにマンスプレイニング。

学習を重ねていくうちに正確さが増していくのかもしれませんが、今はまだ確実に答えが分かっている質問に限って使用するのが無難かもしれないと思いました。今まで使用した英語の質問の答えも自信たっぷりに間違っていたのかもしれない。

 

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ドライアイ対策:涙点プラグを入れました

ドライアイが酷すぎるので、10月に眼科で涙点プラグを入れてもらいました。約5ヶ月経過した感想です。

ドライアイの診断

ドライアイ診断のために、シルマーテストという涙の量を調べる検査を受けました。これは細い濾紙を目に挟み、5分間でどれくらい涙が出るかを調べるテストです。正常ならば10ミリらしいのですが、私は0ミリでした。全然涙が出ていない・・・。号泣すると前評判の高い映画を見に行き、1ミリも涙が出なかったので私の感性が鈍ったのかと心配していたのですが、ドライアイのせいだったのですね。他には目の表面を生体染色して角膜の傷を調べる検査を受けました。

 

インターネットでは、マイボーム腺機能を調べマイボーム腺圧出をする、と書いてある眼科もあったのですが、私が受診した眼科では特にマイボーム腺に関する検査はありませんでした。高齢になるとマイボーム腺に古い油が詰まり、押すとニュルっと白い歯磨き粉のようなものが出てくることがあるとか・・・。恐ろしい話です。

 

涙点プラグとは?

左右の目に上下1つずつ、計4点の涙点があります。涙点をプラグで塞ぎ、目に涙を溜まりやすくする方法です。4箇所全部塞いでしまうといつでも涙目になってしまうとのことで左右1点ずつでした。料金は3割負担で片目約3000円、両目で6000円ちょっとでした。

 

麻酔をすると書かれていたのですが、「すぐだから!!!」と言われ、あっという間に押し込まれてしまいました。麻酔なしで・・・。涙が出ないのはドライアイだからでしょうか。少し痛かったです。

 

5ヶ月経っての感想

いつも涙目くらいが効果がはっきり分かって嬉しいのですが、実際は「少しはいいのかな?」という程度です。涙が出ないことには変わりないので、点眼は欠かせません。涙点プラグは10ヶ月程で自然に抜け落ちてしまうことが多いそうなので、なくなって初めて良さが分かるのかもしれません。とにかく目が乾いて困っていて、とりあえず試さないことには気が済まなかったのでやって良かったです。

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【オーディオブック】Spare(2023)

Spare (2023)
By: Prince Harry The Duke of Sussex
Narrated by: Prince Harry The Duke of Sussex
時間: 15時間 39 分

発音:イギリス英語

評価:5/5

サセックス公爵ヘンリー王子の回想録。Henryが本名ですが、生まれてすぐからHarryと呼ばれていたそうで、日本語表記だとヘンリー王子なのに、英語ではPrince Harry の謎が解けました。

 

暴露本として前評判は悪かったのですが、予想外の面白さでした。ロイヤルファミリーの泥沼の争いを明かすことを目的にしているわけではなく、王室の次男坊として生まれたハリー王子の個人的な回想本です。

 

ハリー王子が生まれた日、父であるチャールズ3世はダイアナ妃に

Wonderful! Now you’ve given me an heir and a spare — my work is done.

と、本気とも冗談ともつかない発言をしたそうです。長男ウィリアム王子が後継者、次男は予備。冗談だったにしても親の口から言ってほしくない台詞です。

 

本人の回想は、ダイアナ妃が事故死した時から始まっています。ハリー王子は当時12歳。夜中に父がハリー王子の膝に手を置きながら事故の事を話したそうです。チャールズ3世はあまり感情を表に出すことはなく親子でもハグすることもなかったようで、ハリー王子は翌朝9時に使用人が部屋に訪れるまで1人で過ごしました。ハリー王子は長らく母が亡くなったという実感がなかったそうで、きっとどこかに隠れているに違いない、ほとぼりが冷めた頃に兄弟を迎えにきてくれるはず、と信じていたそうです。故ダイアナ妃のことを表現する時に亡くなった、のではなく“disappear ”と表現していることに胸が痛みました。

 

ウィリアム王子、ハリー王子が立派だなと思ったのは、父であるチャールズ3世が長らく不倫関係にあったカミラ妃との交際について兄弟に話した時のエピソードです。間接的に母親を不幸にした人であり、カミラ妃の存在がなければ両親は離婚しなかったかもしれない。事故は起きなかったかもしれない・・と拒否するのではないかと思ったのですが、お父さんには幸せになってほしい、カミラ妃には直接の責任はない、と割り切り交際を認めたそうです。ただし、結婚はしないで欲しいという条件付きで。

 

ずっと妻子に対して不誠実だったチャールズ3世に対しては良い印象はなかったのですが、ハリー王子との仲は悪くはなかった様子が描かれています。若いお父さんたちのようには遊んでくれなかったとはいうものの、何か問題があると相談に乗ってもらったりして家庭を壊した父親に対しての恨み辛みはなさそうでした。歴史やシェイクスピアに造詣が深く、環境問題活動に熱心に取り組み、毎日下着いっちょうで三点倒立エクササイズをしている、など普段知ることの出来ない現国王の様子が興味深かったです。

 

メガン妃との出会いは、知人のインスタグラムを見かけて一目惚れしたことがきっかけだったそうです。すぐに知人に連絡したところ、彼女がイギリス滞在中であることが判明。出会った日がダイアナ妃の誕生日だったため運命を感じてしまったようです。遠距離にもかかわらずデートやオンライン会話、チャットを重ね、出会って1年後には同棲を経て婚約に至ります。最初にウィリアム王子・ケイト妃に紹介した際は、お二人がドラマスーツの大ファンだったこともあり、2人とも大興奮だったそうです。メガン妃にプロポーズする前にエリザベス女王の許可も得て、家族の強い反対はなかったようなのですが、兄のウィリアム王子は“アメリカ人の女優さんとうまくいくのか“と懸念を示していたそうです。

 

メガン妃に悪気はなさそうですが、普通にしているだけでも失礼を振り撒いているように見えるのがもどかしいところです。王室との溝を深めてしまったのは残念ですが、妻を守ろうとする姿勢は素晴らしいと思いました。

 

YL:8

語数:150,000語(概算)

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