The Trial(1925) / 審判

The Trial / 審判

【あらすじ】

Kについてはごく平凡なサラリーマンとしか説明のしようがない。なぜ裁判に巻きこまれることになったのか、何の裁判かも彼には全く訳がわからない。そして次第に彼はどうしようもない窮地に追いこまれてゆく。全体をおおう得体の知れない不安。カフカ(1883‐1924)はこの作品によって現代人の孤独と不安と絶望の形而上学を提示したものと言えよう。

 

【感想】

カフカ没後100年なので読んだ本。星四つ。未完が気にならなくなるほど全体が理不尽でした。起訴されているのに理由も知らされぬまま進む裁判。弁護士も進行具合を知る事は出来ない。運良く無罪になっても帰宅する頃には同じ罪で再度起訴される事もある・・・という訳のわからない裁判制度なのです。読み進めていく内に全体像が明らかになることもありません。

 

裁判5年目の男が先輩として親切に仕組みを教えてくれるのですが、弁護士宅のメイド部屋に住込み、弁護士の意のままに操られているのです。しかも5年も裁判のために費やしてきたのに実は始まってもいなかった事が明かされます。なんという理不尽さ・・・。

 

終盤、聖職者が主人公Kに法の門番の話をします。中に入ってはいけないと門番に言われ、その場で一生待って人生を終える男の寓話です。実はその門は男のためだけに用意されたものであり、中に入ろうと思えば入れたのだ、という事を門番は男の死に際に打ち明けます。

 

この門番の話は、これまでの裁判とK. の関係をあらわしているようです。この不条理な裁判の行方もK. の選択の結果だったということでしょうか。

英語自体は難しくないのですが、理解し難い作品でした。うわー、訳わかんない!と思いながら読み進めたのですが、最後の門番の寓話がなんとも言い難い雰囲気を醸し出していて、このパートを読むためにこれまでの不条理に耐えた甲斐があったと思えました。

 

YL:7.5くらい

語数:86,847語

 

紫尾温泉で読書。

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