Love in the Time of Cholera

Love in the Time of Cholera コレラの時代の愛

【あらすじ】

夫を不慮の事故で亡くしたばかりの女は72歳、彼女への思いを胸に独身を通してきた76歳の男から、突如、愛を告げられた。記憶と期待と不安が交錯する二人を乗せた蒸気貨客船が、コロンビアの大河を悠然とただよい始めた時――。内戦が疫病のように猖獗した時代を背景に、愛が愛であることの限界にまで挑んだ、かくも壮大な物語。

 

【感想】

G・ガルシア=マルケス4冊目。ラブストーリーは苦手なのですが、この作品は味わい深くて非常に良かった・・・。余韻も長くて、2−3日は他の本も読めなかったほど。

 

20代の時に振られた女性が未亡人になるまで51年9ヶ月4日待ち続けた男。ただし純愛ではなくその間に622人の女性と寝て“女“というタイトルのノートにまとめていた、というなんとも変わった愛の物語なのです。

 

Florentinoは愛する女性からの手紙を一文字一文字、薔薇を食べながら味わいます。え、何で???と思わせないのがガルシア=マルケスのすごいところで、恋は盲目どころか、愛に生きるとはこういうことか!と有無を言わせぬ説得力がありました。

 

Florentinoは恋文が得意で、代行業を始めたら女性側、男性側に頼まれ自分で書いた恋文に自分で返事をするという事態になったりします。51年9ヶ月と4日、このような調子で次から次へと不思議なイベントが起きるので、読み終える頃にはすっかり恋愛脳になっていました。

 

結婚した女性の方も夫といがみ合いなど色々あったけど、老年になるにつれ変化する愛を表現した文章にグッときました。

“For they had lived together long enough to know that love was always love, anytime and anyplace, but it was more solid the closer it came to death.“

 

20代から70代までの主人公の人生が描かれているので、読みながら自分の過去を思い出し、そして今の自分と同年代のエピソードには共感し、これから経験するであろう老年期をひと足先に経験する、素晴らしい読書体験でした。場所も時代も違う、しかもフィクションなのに、ここまで物語に引き込まれたのも珍しい。

 

もとはといえば、マンダロリアンが好きすぎて新シーズン出るまで待ちきれず、主演のペドロ・パスカル氏オススメ本まで読んだらその中に百年の孤独があって、ガルシア=マルケスにハマったのでした。私の人生にガルシア=マルケスをもたらしてくれたペドロに感謝。英語で手に入る分は全て読もうと思います。

 

YL:7くらい

語数:149,364

 

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砂の女

砂の女

【あらすじ】
欠けて困るものなど、何一つありはしない。

砂穴の底に埋もれていく一軒家に故なく閉じ込められ、あらゆる方法で脱出を試みる男を描き、世界二十数カ国語に翻訳紹介された名作。

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(Amazonより)

 

【ネタバレ感想】
今年3月は安部公房生誕100周年とのことで、新潮文庫の100冊に入っていた砂の女を読みました。すごい本でした。読んでいる最中から砂の感触が不快に感じられて非常に不愉快な読書体験なのですが、先が気になってしょうがない。でもグイグイ読めないのです。主人公が生きていくだけで精一杯なのと同じくページを進めていくのも大変に感じられて。

 

砂に侵食される集落を生き延びさせるために砂かきをするだけの人生。家の敷地外に出ることは許されず、家の中にはテレビやラジオさえない。新聞さえ配給制という貧しい暮らし。もちろん脱出したいのだけれども、読み進めるにつれ、戻りたいと切望している元の教師生活も灰色な生活ではなかったのかと思い至るのです。今の砂防のためだけに生きる生活に意味はあるのかと憤っているが、そもそも元の生活も価値あるものだったのかと。自分の夢も希望も生気も砂に吸い取られていく読後感でした。

 

これだけ不快で重い本ならば、途中で投げてもおかしくないはずなのに、読む者の深層心理に揺さぶりをかけてくるような作品でした。

 

映画化された作品が死ぬまでに観るべき映画1001作品に入っています。勅使河原宏監督は、この作品で日本人で初めてアカデミー監督賞にノミネートされたそうです。今まで安部公房なんて読もうと思ったことはなかったけれど、生誕100周年の宣伝を目にしたり、大人買いして詰んであった新潮文庫の100冊に入っていたり、修行中の死ぬまでに観るべき1001作品だったりで、出会うべき作品だったのかもしれません。

 

 

ナミブ砂漠にて。ジメジメしたイメージの砂の女と違って灼熱の砂でした。

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マリアージュフレールでランチ

英語仲間のエミコさんとマリアージュフレール銀座でランチしました。

 

今月末からディズニープラスで始まるショーグンを楽しみにしているあまり、1000ページ超の原作本も読み、ジャパンプレミアも応募し、参加する気満々だったのですが、2人とも外れてしまいました。せっかく休みを合わせたので2人で残念会です。

 

レンズ豆の前菜と、小羊肉のメイン、ペアリングされたお茶とデザートで5500円。お料理に合わせたというオススメのお茶は定番中の定番、マルコポーロでした。600種類以上もの紅茶がある専門店ならば、普段自分では選ばないような変わったお茶が飲みたかったかも。もちろん自宅で淹れるより美味しかったです。

 

色々と茶葉を買い始めた年に、お高いお茶は値段に見合う美味しさなのかが知りたくなり、マリアージュフレールで100グラム17,000円の茶葉を買ったことがありました。結果は・・・好みではなかったせいか、“うーん、まぁ普通のお茶?“という感じでした。温度や抽出時間の問題だったり、素敵空間の演出なども必要だったのかもしれません。茶葉に高いお金を出すよりは、割高でもお茶の専門店で飲む方が良かったなと思えた経験でした。

 

エミコさんともコロナ禍以来3年ぶりに会えて楽しいひとときでした。今年は精力的に出かけたいです。

 

銀座三越のアクアリウム

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創作する遺伝子―僕が愛したMEMEたち

創作する遺伝子―僕が愛したMEMEたち

 

 

 

ゲームクリエイターの小島秀夫監督が1万円をもらって池袋ジュンク堂でお買い物をする動画です。小島監督、毎日本屋さんに行くんですって!目的の本を買うためにしか書店に行かない自分にとってはその一言が衝撃で、もっと色々知りたくなって著書を手に取りました。

 

小島監督がこれまでに出会った本や映画、音楽を紹介しています。最近の売れ筋ではなく、数十年前から現在までの本が紹介されているのが良いです。監督は私よりもひと世代ほど年上なので、これまで知らなかった有名どころの作品の当時の受け止められ方なども知ることが出来て興味深い。どのエッセイからも、本に対する愛が溢れていて、読みたい本が無限に増えてしまいます。

 

本に対する考え方で素敵だな、と思ったのは

本屋の店頭で“当たり“が検索出来ないように、創作の現場でも正解を検索できるはずがない。それは常に自分の中にしかないのだ。だから、それを見極める感性乱数と目を磨き続けるしかない。

という部分。たくさん読んでも心の底から良かった本と出会えるのは100冊に1冊かもしれない。でもその1冊に出会う確率を上げるためには自分の感性を磨くしかない。

 

私は本の好みがかなりはっきり決まってしまっているので、これまでは目的なく本屋さんに行く発想はありませんでした。ハズレを引きたくないという気持ちが強すぎるのかもしれない。もう少し自分の境界を広げたいと思えた一冊でした。

 

小島監督といえば、デスストランディングを発売時に買ったのですが難易度が高すぎて放置してたんですよね・・。荷物を運ぶにもバランスが取れずに落としてしまうし、地形が読めず同じ場所で延々と迷うし、お化けみたいなのに追いかけられて命からがら逃げてきてそのままでした。こんなに本や映画の好きな人が作ったゲームなら素晴らしいに違いないので再チャレンジしてみようかな。

 

 

 

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【オーディオブック】The Puppet Show /ストーンサークルの殺人

The Puppet Show (2018) / ストーンサークルの殺人

【あらすじ】

イギリス、カンブリア州のストーンサークルで次々と焼死体が発見された。マスコミに「イモレーション・マン」と名付けられた犯人は死体を猟奇的に損壊しており、三番目の被害者にはなぜか、不祥事を起こして停職中のNCA(国家犯罪対策庁)の警察官「ワシントン・ポー」の名前と「5」の字が刻み付けられていた。身に覚えのないポーは上司の判断で停職を解かれ、捜査に合流することに。そして新たな死体が発見され……英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールドダガー受賞作。(Amazonより)

 

【感想】

小島秀夫監督が紹介されていたので読んでみました。

地道な捜査が特徴の作品かな、と思いつつ半分読んだところから一気に物語が動き出しスリラー作品に。読み応えがありました!

 

主人公のワシントン・ポーの観察眼と、女性分析官ブラッドショーの科学捜査の組み合わせが素晴らしく、性格が正反対の2人の会話がいい味を出しています。

 

読み終わる前に原書で出ているシリーズ5作目まで買ってしまいました。夢中で読めるミステリーシリーズを探していたので嬉しい出会いでした。

 

オーディオブックはイギリス英語で、くっきりはっきり朗読されているのでかなり聞きやすかったです。ナレーションが良いのでオーディオブックがおすすめ。

 

YL:6−7くらい

語数:88,000語(推定)

 

 

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