【小説】女のいない男たち(2014)

女のいない男たち (文春文庫)

読了日:2022年1月11日

評価:9/10

村上春樹の短編集。映画「ドライブマイカー」が非常に良かったので、原作を読んでみました。

以下ネタバレ感想です。

 

映画は6作品が収められた短編集の中から、寡黙な若いドライバー、みさきが舞台俳優である家福の送迎をする「ドライブマイカー」、前世が八つ目うなぎの記憶を持った女が、中学生の頃に好きな男の子の家に忍び込むエピソードを性交後に話していく「シェエラザード」の2作が合体したものだったようです。この2つに劇中劇のチェーホフのワーニャ伯父さん。どれも興味深いけれど、盛り上がりに欠ける3つの話をどうやって映画に仕立てたのか。

 

中高生の時は、村上春樹作品はよく意味が分からないので苦手でした。ところが今になって読み始めてみるとすごく面白い。ただ、物語の途中はすごく引き込まれて夢中にさせられるのに、結論はないのです。え?そこで終わるの??というところで終わってしまう。昔はそこが納得いかなかった部分だったのですが、自分が歳をとったせいなのか、結論がはっきりしなくても気にならなくなりました。読み終わった後、“え〜・・・“と不思議な気持ちになるのが却って余韻を感じられて良いのかもしれません。

 

映画「ドライブマイカー」は、原作の雰囲気を保ったまま、原作にはなかったクライマックスが加わり観客の心をがっちり掴む作品だったと思います。ドライブマイカーにシェエラザード。接点のない2つの作品の繋がり方が見事でした。そして原作にはないみさきのその後も。韓国にいるらしいみさきが、家福から譲り受けたらしいサーブ900を運転しており、顔の傷を目立たなく手術したらしいこと。大型犬を飼い、スーパーで買い物をしている姿から、現地で生活の基盤がしっかりあるらしいこと。幸せに暮らしている様子がみてとれて安心しました。そして家福にとっては、妻との楽しい生活だけではなく、悲しい思い出もあるサーブ900だが、みさきにとっては新しい人生を切り拓くきっかけになった良い思い出の車になった事が嬉しかった。みさきがサーブ900を引き継いで今後も長く大切に乗ってくれるだろう事を予感させるラストでした。村上春樹が書いたらこの爽やかなラストシーンは無かったのではないかと思いました。

 

原作がある映画作品をみると、大体自分が頭の中で再現した原作の方が良かったかな・・と思うことが多いのですが、この作品は映画の方が良かったです。

 

もし映画「ドライブマイカー」に感動して、原作を手に取ってみようと思われたなら、表題作だけではなく、「シェエラザード」も読むことをお勧めします。そして映画化とは関係なかったけれど、「木野」も印象的な作品でした。

 

女のいない男たち (文春文庫)

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【小説】女のいない男たち(2014) への3件のフィードバック

  1. Augustcux のコメント:

    text carrier and protective

  2. kov のコメント:

    私も高校時代に村上春樹作品を読んで苦手と思ったまま現在に至っていますが、yukoさんの感想を読んだら読んでみたくなりました。短編集なら読みやすそうです。

    • Yuko のコメント:

      Kovさん。村上春樹、途中はとっても面白いのに、結論がないんですよね・・・。なぜなんでしょう。でも大人になったせいか、途中が面白いからそれでいいかと思えるようになりました。読みやすいし。

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