【映画】Casting By (2012)キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性

 

原題はCasting  By。2012年の作品ですが、今回渋谷シアター・イメージフォーラムで公開されたので観に行きました。

 

「映画監督の仕事の9割はキャスティングの質で決まる」とマーティン・スコセッシは述べています。重要な仕事の一つでありながら、最も知られていなかった仕事=キャスティングに焦点を当てたドキュメンタリー。

 

1940年代の映画界は、配給会社が役者を雇用しており、映画制作の際は、俳優リストから選んで配役していました。これまで荒くれ者の役が多ければ次回も荒くれ者、前作で医師の役が上手ければ次回も医師というように、それぞれの役者はタイプ毎に役割が決まっていました。また、「スター」女優がいれば、次作はその女優さんの人柄に合っていようがいまいが、そのスター俳優さんを配役するのがお決まりでした。

キャスティングの先駆者マリオン・ドハティ(1923ー2011)は、第二次世界大戦後、テレビの配役アシスタントとして業界に入ります。テレビの生放送ドラマ枠に俳優を起用するために、NYのオフブロードウェイに出演している俳優たちをスカウトしていきました。ドハティは俳優との面談でそれぞれの個性や特徴をメモし、本人さえも気づいていなかったような“良さ”を見出すのが上手かったようです。また、たとえオーディションでは上手く演技出来なくても、面接での直感を信じ、「この人なら絶対に敵役」と、監督や製作会社を説き伏せ、作品を成功させていきました。

 

ロバート・デュヴァルから元ルームメイトのダスティン・ホフマンを紹介されたドハティは、原作では金髪碧眼の典型的な白人ハンサムの設定であった「卒業」の主役として、彼をオーディションに紹介します。ちょうど先週「死ぬまでに見るべき1001映画作品」の一つとして「卒業」を見たばかりだったので、ダスティン・ホフマンの背が低くて苦悩、暗さが滲み出ているような繊細な演技はまさに適役だと思いました。白人ハンサムだったら深みはなかったのではないかと思います。

 

また、リーサル・ウェポンでメル・ギブソンの相手役としてダニー・グローヴァーを推薦した時は、「相手役が黒人!?」と監督に驚かれたそうです。ドハティは「相棒の肌の色は設定に書かれていない。黒人ではダメだという決まりはない」と説得し、後に監督に感謝されています。白人と黒人のバディ・ムービーが当たり前ではなかった時代もあったというのも驚きですが、先入観にとらわれず、役者さんたちの適性や相性などを見抜き、説得力を持って提案できる力量に感動しました。

 

キャスティング・ディレクターにアカデミー賞を授与する案は却下され、マリオン・ドハティへの功労賞案も実現しなかったのは残念な事ですが、彼女の50年にわたるキャリアを知る事が出来て良かったです。映画好きにはおススメです。

カテゴリー: 映画 タグ: パーマリンク

【映画】Casting By (2012)キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性 への2件のフィードバック

  1. kov のコメント:

    とても興味を惹かれる内容なのですが、配信では見られないようで残念です…。このような制作の舞台裏を知ると映画も一層楽しめそうです。

    • Yuko のコメント:

      Uーネクストあたりで配信されないか見張っておくね!映画関連のドキュメンタリーも面白そうなので観ていこうと思っています。

Yuko へ返信するコメントをキャンセル