本屋さんで出会って思わず買ってしまった本。ちょうどサム・ライミ監督のドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネスが公開された時期だったので、目につく場所に置いてありました。
子供の頃、なぜかサム・ライミ監督の「死霊のはらわた」が好きで、ビデオテープを持っていました。子供の頃は心の底から怖いと思っていました。特に足首に鉛筆を突き刺してグリグリするシーンなどは、子供にも再現可能で、いつかやられてしまうのではないかと本気で恐れていました。数年後にビデオテープに緑のカビが生え、触るのもおぞましい存在となってしまった思い出の作品です。今、配信で見返してみると、ハタチそこそこの学生さんが自分達でお金を集めてこの作品を!?と称賛の思いが強すぎて全く怖くありません。
死霊のはらわたは、大学を辞めて映画制作するため、スーツを着て近所の家を回り資金を募ったそうです。そして撮影中も2週間おきに進捗具合を手紙で出資者に知らせていたのだとか。撮影は過酷で、期間も長引いてしまったため、スタッフも出演者も次々と脱落していったそうです。
そこまで苦労して完成させた作品ですが、本国アメリカでは公開予定が立たず、カンヌ映画祭でプロモーション試写を行ったそうです。それを見たスティーブン・キングが好意的なレビューを書いたことで興味を持ってくれた配給が現れ、アメリカ公開が実現したらしいです。キング先生大絶賛の本や映画はいつも面白いという訳ではなく、割と気軽に大絶賛するよね・・と思っていたのですが、大御所が褒めるということは、誰かの人生を劇的にかえる可能性があるのだなぁと思ったエピソードでした。
西部劇クイック&デッドの監督をなぜサム・ライミが??というのは、主演に決まった売れっ子女優のシャロン・ストーンが死霊のはらわたIIIの大ファンで、サム・ライミ監督を指名したからだとか、コーエン兄弟との関係や、予算が潤沢についた作品でもプロデューサーなどからの口出しが多く、ファイナルカット権もないために不本意な思いが続いた話などが興味深かったです。
監督インタビューで、「実際、僕はあまりポピュラーじゃない映画を20年間作っていて、あまりお金を稼がなかった。だから僕は、自分はそういうタイプのフィルムメイカーだと思っていた」というコメントがありました。死霊のはらわたが有名だからといってお金を稼げたわけではなかったのが意外でした。この本では、サム・ライミ監督の作品それぞれの解説や監督インタビューなどがあり、さらっと読める読み物として楽しめましたが、監督のインスピレーションが何処からくるのか、制作風景や、作品を作っていないときは何をしているのかなども聞いてみたかったかな。