NTLive The Lehman Trilogy (2019)

National Theatre Live The Lehman Trilogy

第75回トニー賞で最多5部門の演劇作品賞、演劇演出賞(サム・メンデス)、演劇主演男優賞(サイモン・ラッセル・ビール)、演劇照明デザイン賞(ジョン・クラーク)、演劇装置デザイン賞(エス・デヴリン)を賞したリーマン・トリロジー。6月24日から池袋シネリーブルで2週間限定上映されたため観に行きました。

 

素晴らしかった!3時間超のお芝居を立った3人で!男性ベテラン俳優3人が幼児から若い女性、お爺さんまで160年にわたる登場人物を全て演じ分けた様子は圧巻でした。舞台セットもオフィスのまま、背景の画像だけが変わっていきます。音楽はピアノの生伴奏だけ。鑑賞前は、3時間半は長すぎるかも・・・と自信が無かったのですが、一度も集中力が途切れることなく舞台上の3人に目が釘付けでした。トニー賞最多5部門受賞も納得の良さでした。

 

1844年、リーマン3兄弟の長兄がドイツからアメリカに移住し、アラバマに小さな衣料品店を開く所から2008年に経営破綻するまでを描いた作品です。「デニムという破れない布があるらしい」というような時代。最初は衣料品のみ扱っていましたが、周囲の農園から契約をまとめ、綿花を買い取り北部に転売する仲介業者となります。

 

大火事で綿花畑が焼けてしまい、多くの綿花プランテーションが再起不能と思われた時、農場主に資金を貸し付け、作付けに必要な種や道具なども売りつけました。6年にもわたる南北戦争で街が破壊された時は、投資銀行を設立しアラバマ州知事から資金を取り付けます。ピンチを活かしてビジネスが順調に拡大していく様子にワクワクし、1929年暗黒の木曜日の場面では、自分の持株のことが不安でたまらず株価をチェックしたくなるほど不安な気持ちに・・。リーマン兄弟のエキサイティングな人生を一緒に体験させてもらったような舞台でした。

 

心に残った名言をいくつか挙げておきます。リーマン創業者は「モノを買うために金を使うのではない。金を増やすために金を使うのだ」と言い、孫の世代のリーマンは「マーケティングの時代には客は必要だからモノを買うのではない。欲望のために買うのだ」と述べます。金持ちがどんどんお金持ちになるには理由がある・・・と自分の消費行動を反省した台詞でした。

 

もう一つは、年を取るために心構えというユダヤ教の教えです。“年を取ることは新しい土地に移住するようなものだ。これまでのやり方は通じないし、新しい言葉も覚えないといけない“というもの。ここでいう言葉は言語の事ではなく、新しい世代の仕事や経済の仕組み等のようです。リーマン一家の中で新しい世代が台頭してくる時は、最先端の感覚を持ち、新しいことにもどんどん挑戦し、眩しいくらいに頼もしいのに、70歳くらいになると過去の成功体験に囚われ投資先の嗅覚も鈍ってしまいます。自分は何も変わっていないのに周囲が先に進んで取り残されてしまう。年を取るということは、新しい国に突然放り出されるようなものだ、という心構えが急に自分の身にも降りかかってきたような感覚でした。

リーマン3兄弟の3世代、160年にも及ぶ歴史をたった3人で演じきったもの凄い作品でした。再上映してくれて良かった。ナショナルシアターライブは、トム・ヒドルストンファンにもかかわらず、「コリオレイナス」で寝落ちしてしまったので、その後は敬遠してしまっていたのですが、今後は積極的に見にいこうと思いました。

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