【オーディオブック】The Everything Store(2013)

The Everything Store (2013) / ジェフ・ベゾス果てなき野望

By: Brad Stone

Narrated by : Pete Larkin

発音:アメリカ英語

時間:13時間

評価:5/5

【感想】

アマゾンCEOジェフ・ベゾスについて、生い立ちから創業、2013年あたりまでをThe New York Times や Newsweek の記者だったBrad Stoneがまとめたノンフィクション作品。面白かった!

 

1986年にプリンストン大学を卒業し、ヘッジファンドD.E.ショーに勤めていたベゾスは、インターネット書店を開業するため、1994年に退職。結婚したばかりの妻、マッケンジーと、引越し先も決まらぬまま東海岸からシアトルに移動します。当初、社名はCadabra.Inc の予定でしたが、Cadaver(死体)と聞き間違いやすいとの指摘を受け、Amazon.com に変更されました。当座の開業資金は両親から。70%の確率で戻ってこない可能性がある・・と説明していたそうです。

 

ジェフ・ベゾスの両親は、父18歳、母16歳の時に結婚しましたが、ベゾスが1歳の時に離婚。父は仕事が続かない人で、月40ドルの養育費も支払われない時がありました。ジェフが3歳の時に母が再婚。相手は16歳の時にキューバからアメリカに移民としてやって来た青年で、ジェフは養子となり、ベゾス姓となりました。再婚に際して、実の父には今後関わらないようにと申し出があり、実父もその後再婚相手の姓を忘れてしまい、その後45年間にわたり音信不通となりました。

 

創業当時のアマゾンは長時間労働を課しており、土日にミーティング、土曜朝にエグゼクティブのブッククラブがあり、ワークライフバランスは?と従業員に質問された時、ワークライフハーモニーを推奨したそうです。家族のいる社員には不評で、ある社員は車を路駐したのを忘れて仕事に没頭するあまり、車がレッカーされたお知らせにも気づかず、数ヶ月後に自宅郵便をチェックした時には、車はすでにオークションで売られていたそうです・・・。

 

Kindle開発の話も興味深かったです。1998年NuboMediaから出たRocket ebookはBarnes&Nobleで販売開始されました。直接パソコンに繋げてダウンロードするタイプで、1つのデバイスに10冊ほどしか入らなかったようで、売れ行きも芳しくありませんでした。2004年、Kindle開発チームは、電子ブックデバイスという全く新しいデバイスのモデルとして、ニール・スティーブンソンの小説 The Diamond Age を参考にし、この小説の主人公「フィオナ」がKindleと名前がつく前のプロジェクト名だったそうです。Kindleのデザインを任された外部デザイナーは、キーボードの無いデザインを提案していましたが、ベゾス氏がブラックベリーのようなデザインを強く希望したため、下半分がキーボードに占められたデザインになりました。

 

Kindle発表前に各出版社に電子ブック版を用意させるのも大変で、電子版の版権がないとか、ネットで海賊版コピーされてしまうのを恐れて電子版を遅らせるなど抵抗されたようです。人気タイトル9.99ドルというのも仕入れ値は紙本と同じ15ドル台だったので赤字覚悟。2020年にはアメリカでの電子書籍売上は1500億円規模になっているようなので、赤字覚悟でも他社より早く電子書籍を開拓する、というのは正しい選択だったのではないでしょうか。Amazonは電子書籍販売のうち67%の売上を占めているようです。2008年に買収したオーディオブック大手Audibleもオーディオブックアプリでは1番人気ですし、今となっては他社はなかなか追いつけないのではないかと思いました。

 

無駄を省くやり方はトヨタから導入したらしく日本からのコンサルタントのエピソードもありました。

Japanese consultants occasionally came to work with Amazon, and they were so unimpressed and derogatory that Amazon employees gave them a nickname: the insultants.

日本人コンサルの人たちは感動もせず軽蔑的なので裏でinsultantsとニックネームを付けられていたようです。そこのところ、もっと詳しく!と気になったのですが、わずか1ページ以内のエピソードでした。

 

書籍分野だけではなく、他にもアマゾンプライム導入の話やAWSとEC2開発秘話など、どの分野のエピソードも面白かったです。身近にある企業の話なので、ところどころ知っている部分もあり、聞きやすかったです。


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