The Housemaid (2022)
BY Freida McFadden
NARRATED BY Lauryn Allman
時間:9時間46分
発音:アメリカ英語
評価:4.5/5

The Housemaid
一時期SNSの洋書読者たちが全員読んでいる勢いで感想が流れていたので読んでみた本。
もともと好みではない作風なのですが、皆が夢中になるだけあって面白かった!
【あらすじ】
過去に問題を抱えた若い女性、ミリーは、裕福なウィンチェスター家で住み込みのメイドの仕事を得る。彼女にとっては人生をやり直す絶好の機会のはずだった。だが、仕事を始めるとすぐに、家の中で奇妙な出来事が起こり始める。鍵のかかった部屋、不可解なルール、そして気まぐれで不安定な妻のニーナ。時に親切に見えるが、突然冷酷になる彼女の態度にミリーは困惑する。
しかし、この家にはもっと恐ろしい秘密が隠されていた。そして、それに気づいた時、ミリーはすでに逃げられない状況に追い込まれていた。
ここからネタバレを含みます。
主な登場人物
🔹 ミリー・キャロウェイ
本作の主人公。刑務所を出たばかりで仕事を探していたところ、ウィンチェスター家の住み込みメイドとして雇われる。過去を隠しながら、慎ましく働こうとするが、やがて家の異常さに気づき始める。強い意志と機転の利く性格が魅力的なキャラクター。
🔹 ニーナ・ウィンチェスター
ウィンチェスター家の妻。情緒不安定で、ミリーに対して理不尽な態度を取ることが多い。感情の起伏が激しく、突然怒り出すこともあれば、優しく接することもあるため、読者は彼女が「悪役」だと思わされる。しかし、物語が進むにつれて、彼女こそが本当の被害者であることが明らかになる。
🔹 アンドリュー・ウィンチェスター
ニーナの夫。一見すると理想的な夫であり、優しく理知的な人物に見える。しかし、実際は冷酷で支配的なDV夫であり、妻を徹底的にコントロールし、精神的・肉体的に虐待している。本作の真の悪役。
🔹 セシリア・ウィンチェスター
ウィンチェスター家の娘。父親の影響を受け、傲慢で意地悪な性格。物語に大きく関与するわけではないが、家庭環境の歪みを象徴する存在。
🔹 エンゾ
ウィンチェスター家の庭師。寡黙で観察力があり、ミリーと親しくなる。彼の存在が後半の展開で重要な役割を果たす。
【ネタバレ感想】
刑務所を出たばかりのミリーは、経歴を詐称し、幸運にもウィンチェスター家の住み込みメイドの仕事を得ます。しかし、屋根裏部屋に寝ることを強制されたり、ニーナの異常な言動に振り回されたりと、次第に不安を感じ始めます。
ニーナはミリーに冷酷な態度を取る一方で、時折、助けを求めるような仕草を見せ始めます。アンドリューは「ニーナは精神的に不安定だ」と語り、ミリーは彼の言葉を信じ始めます。まるで「良い夫」と「ヒステリックな妻」の典型的な構図のように見えるのですが、これが巧妙なミスリードだったのです。実は、ニーナはアンドリューの支配と虐待に苦しめられている被害者でした。彼は妻を精神的に追い詰め、外の世界から孤立させ、家の中で支配していました。ミリーはこのことに気付かず、アンドリューと不倫関係になるのですが、これはミリーを自分の身代わりにして逃げようとしているニーナの罠だったのでした。
ニーナを追い出し、優しくお金持ちのアンドリューを手にいれたミリーでしたが、些細なことでアンドリューを怒らせてしまい、虐待が始まります。ところが、ミリーは黙って虐げられる女ではありません。ここから始まる彼女の復讐劇が痛快でした!彼が今までニーナを監禁し、恐怖と暴力で支配していたのと全く同じ方法で、彼に復讐を果たしたのです。
本作品の魅力は加害者と被害者が入れ替わるサプライズ展開でしょうか。序盤では、ニーナがヒステリックな妻で、アンドリューが穏やかで理知的な夫のように描かれますが、実際はその逆であり、アンドリューこそが冷酷なDV加害者でした。そしてニーナは新しい家政婦を自分の代わりにして逃げようと画策する加害者でもあります。このダイナミックな展開にワクワクしました。
そして何より、アンドリューが痛烈に罰せられる結末が最高に爽快なのです。DV加害者に対して徹底的にやり返す過程が痛快でおおいに気持ちが盛り上がりました。
描写や展開が雑だな、と感じることはあるものの、易しい英語で書かれていますし、サクサク進むので、大人向けの洋書を読み始めた方でも読みやすいかもしれません。
YL:6−7くらい?
語数:85,136語(概算)