Technology Ventures podcastより

Stanford Technology Venturesのポッドキャストより、Life Scienceの分野で活躍されているSteve Burrill氏のレクチャーが興味深かった。

 

Burrill氏は1960年代からライフサイエンスの分野でベンチャー企業にかかわり、現在はBurrill&CoというVenture capitalのCEOをされている方。ベンチャーの分野に長くかかわり、成功をおさめた経験から最も大事だと思われるポイントをいくつか。

 

Industry をよく知ること

自分がかかわる業界についての専門知識を得ること。その業界で一番のエキスパートになれば、皆が自分の所に意見を求めに来るようになる。Technical knowledge を得て専門家になることが大事。

 

Relationshipを築くこと

Networkを大事に。15年前に大事だとは思わなかった人が将来重要な役割を果たすことになることもある。

 

情報から Insightを得ること

今の時代、情報は溢れている。たくさんの情報を吟味し、そこからinsightを得て価値ある情報に出来ることが大事。そこからadvantageが得られる。
たとえば、現在の情報から2050年の医療を予測することなど。

 

Capitalについて理解すること

会計知識なども重要。マーケット、組織の仕組みを理解すること。

 

Focusする時間をとる

やりたいことに集中する時間を取ること。

 

以上がレクチャーの大まかなポイント。話の中で、私にとっても重要だと思ったのは、情報からInsightを得ること。洞察力を養うことと理解したんだけど、あっているだろうか。巷にたくさんある情報をいったん消化して、そこから洞察するということは非常に大事なことだと思った。専門家になれ、というTipsとも関係すると思うんだけど、情報を読んだり集めたりするのは誰にでも出来る。みんな同じニュースや情報を得ているのに、そこから価値ある情報を見出すのが難しい。ただの一次情報から何かを得るためには、専門家としてこれまで時系列的に体系的な知識が蓄積されていて、バラバラの情報から付加価値を持った情報へと昇華できる能力が求められていると感じた。

 

もう一つ印象深かったのは、見方一つで状況はかわるという例。The glass is half full. という表現がある。楽観的な人は、コップに半分入った水を見てhalf full と言い、悲観的な人は half emptyという。起業家はhalf full と考えるべきという例えで、医療の未来についての話が面白かった。アメリカではGDPの約20%を医療費として使用しているが、その対象は人口の5%の病気の人に対して。今後は予防医学が大事になるので、残り95%の健康な人をLife Scienceのターゲットとすれば大きな市場となるという話。

これは今まで自分の中になかった発想だった! 私は悲観論者で、日本などGDPの8%程度しか医療費に使われていない上、2050年までにGDPは激減するという予想があって、インドネシアにまで抜かれてしまう。人口は現在の1/3近くにまで減少する。これから老人が増えるので医療・介護は成長分野!という声を聞くけれども、国も個人もお金を持っていなければ医療にかけられる金自体が少ないはず。2050年の老人は今の私たちだし、金を持っているとは全く思えない。全く成長産業じゃないし、医療者の給料確保でさえ怪しいのではないかと思っていた。Burrill氏の The glass is half full. という観点で物事を考えれば、日本の老人医療は先細りかもしれないけど、予防医学で健康な人を対象に商売をすれば、新しいマーケットが開けるということになる。

 

そういえば、先月アメリカでも今後は予防が大事だという話を聞いた。2050年にアメリカにおけるヒスパニック系の割合は30%前後になる。肥満や糖尿病など生活習慣に起因する病気は貧困層に多く、それは健康教育の不足によると思われる。今後ヒスパニック系が増えれば、生活習慣病から心疾患や脳疾患などの予防可能な病気が増え、医療費が高騰する恐れがあるため、貧困層を教育し理想の生活習慣を提案することが重要と。

 

この話を聞いた時は、”未来は恐ろしい!”と思っただけだったのですが、これをチャンス!と捉える発想の転換が大事。日本の老人医療は縮小するかもしれないが、例えば日本の生活習慣や食べ物をアメリカに紹介して、日本食健康ブームでも起こせばいい商売になるかもしれない。マクドナルドみたいにドライブスルー方式でお惣菜を売るチェーン店とか。アメリカでは、毎晩ピザ→ハンバーガー→メキシカンフードのローテーションという家庭も珍しくないそうだから、お手軽に日本食をカロリー制限食にして売りだせば日本の”健康な国”というイメージも相まって成功するかも。

 

11月のThe Economistの日本特集を読んでからもう日本は駄目だ…私も野垂れ死ぬ!と悲観的に考えていたのだけど、物の見方を変えることでチャンスを見つけることは出来るということを学びました。このPodcastシリーズはテクノロジーベンチャーという起業に関するシリーズですが、起業するしないは別として、生き残る術を学ぶいい機会です。

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  1. ピンバック: トータルクリーン

  2. ピンバック: 柿渋健康研究会

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