多読記録 Team of Rivals

 Team of Rivals. 6月には読み終わっていたんだけど、読後に考えることが多くてなかなか感想をまとめられなかった。原書で900ページ超と、とっつきにくい本ではあったけれども、読んでよかったです。

 1800年代の出来事ながら、当時の書簡、日記、新聞を丹念に調べ、つじつまの合うストーリーにするのはとても大変な作業だったと思う。リンカーンやライバルたちの日記だけではなく、その娘、友達の日記まで調べられている。10年がかりのプロジェクトだったようだ。しかも、ただ事実を年代順に並べるのではなく、当事者が何を考え行動していたのかがわかるのもよい。日記に書き連ねられた、ライバルに対する黒い感情や、表には出せない批判などがストーリーに生き生きとした感情を与えている。

 

 リンカーンの学びに対する姿勢

心にグッとくる文章が多すぎて、マーカー引きまくりだったのだが、その中でも一番のお気に入りは、若き日のリンカーンが親友ジョシュア・スピードに語ったとされる言葉。

 I am slow to learn and slow to forget that which I have learned. My mind is like a piece of steel, very hard to scratch any thing on it and almost impossible after you get it there to rub it out.

 自分の学び方を鋼鉄になぞらえ、鉄をひっかいて何かを刻むことは非常に大変だけれども、一度刻んでしまえば、どんなに擦っても消えない。覚えるのに時間はかかるものの、一度覚えたら忘れない。

 リンカーンは、学校に行った期間は合計で1年にも満たなかったが、独学で法律を学び弁護士になった。空いた時間にはいつも本を読んでおり、大学を出て弁護士になった同僚たちが学校で学んだ天文学や高等数学などを、大人になってから独学でコツコツと学んだ。表面をなぞるような読書ではなく、難しいことでもじっくりと取り組み、わかるようになるまで学ぶ姿勢をもっていた。

 リンカーンのコミュニケーション術

 All his life, he had taken care not to send letters written in anger. 

 決して短気を起こして事態を悪化させないこと。腹立たしいことがあっても、感情にまかせて行動せず、いったん腹におさめる。怒りがおさまってから行動すること。そして人の話をよく聞くこと。ただし、広く人々の意見を聞いた後は自分で決断する。決断をする時は周りに左右されない強い意思を持っていた。

 リンカーンの才能は、ひと目見て誰もが認めるという類のものではなかった。派手さはないものの、じっくりと付き合ううちに彼の懐の深さ、チームをまとめる力、人の良さがわかり、周囲の信頼を得ていった。彼の政敵たちは最初、リンカーンを過小評価し、”田舎弁護士”とバカにするものもいた。後に War Minister となったスタントンは、若き日のリンカーンを侮辱し、皆の前で恥をかかせたのだが、リンカーンはそれを根に持つことなく、組閣の際にはそのポストに最適な、能力のある人物としてスタントンを起用した。

 

  感想

 この本を読むことで、リンカーンの素晴らしさをあますことなく堪能できました!リンカーンの素晴らしさは疑う余地のないことですが、はたしてその資質は今求められるリーダーの資質と同じだろうか、と考えながら読みました。めまぐるしく移り変わる状況や情報に素早く対処し、若いうちから優秀であることを周囲に知らしめなければ現代では成功出来ないのではないかと。ただ、リンカーンのように、広く知識を学び、自分の中で消化して行動に取り入れること、じっくり考えること、目先の問題や今現在の評価に左右されずに大きな目標を見据えて行動すること。このような本質的なことは、時代が変わっても備えたい基本的な資質なのではないかと思いました。

 自分への戒め。現代はインターネットや参考書を使えば知りたいところだけパッとわかるため、じっくり考える、体系的に学ぶということがおろそかになっていると感じました。リンカーンの学問への態度を取り入れたいと思います。そして怒っている時に怒りに任せて発言しない、という教えも。

 英語はそれほど難しくないものの、読み終えるには根気が必要。初めての洋書としては不向きかも。ある程度背景知識があったほうが読みやすいので、この本の前に簡単なリンカーンの自伝を読むとよいと思いました。


 
YL8, 語数187500(概算)

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