Orange is the New Black: My Year in a Women’s Prison Written by: Piper Kerman Narrated by: Cassandra Campbell
時間:11時間14分
発音:アメリカ英語。
速度:150-160語/分前後。発音がクリアで非常に聞き取りやすい
オススメ度:★★★★★ アメリカの女性刑務所を疑似体験できる。
Netflixでドラマ化された、実話を元に作られたOrange is the New Blackの原作。筆者のバイパーは、大学卒業後、レズビアンの恋人がドラッグディーラーだったため、国際的なドラッグ取引きに関わり、2−3回トランク一杯の現金を外国へ運ぶのを手伝ってしまう。数ヶ月で恋人と別れた後は、まっとうな職業につき、男性の恋人も出来て普通に暮らしていたのだが、数年後、平穏に暮らしていた彼女の元に突然連邦政府の係員が現れる。ドラッグディーラーの一味が捕まり、取引きに関わった者全てが起訴されてしまったのだ。
バイパーは直接ドラッグ取引きには関わっていなかったものの、コンスピラシー・チャージが適応されると、個々の犯罪の大小にかかわらず、このグループがかかわって取引きされた全てのドラッグの量に対して刑罰が決まってしまうという。刑期は10年から20年。無罪を主張して負けてしまうと、10年以上刑務所に収監されてしまう恐れがあるため、バイパーは罪を受け入れ、刑期を軽くしてもらう決断をした。
ところが、西アフリカ出身の、ドラッグ輸出元の男がイギリスで捕まり、バイパーが証言台に立つ可能性が出てきたため、収監予定が延期されてしまう。いつ収監されるかわからぬまま6年が経ち、いよいよ13ヶ月間の刑務所生活が始まった。
バイパーが収容されたのは、ミニマムセキュリティの連邦刑務所で、200人程の女性が収容されている。200人の内訳は、50%がラティーノ、24%が白人、同じく24%がアフリカ系アメリカ人、ネイティブアメリカンやインド人、中国人などのマイノリティが各一人ずつ。刑務所の中には、各人種による”Tribe”があり、新入りが収容されると、白人の面倒は白人系グループが、ラティーノの面倒はラティーノがみる、というふうになっているらしい。もし新入りがマイノリティで、既存グループがなければ、最も親切なグループが面倒をみてくれる仕組みになっているそうだ。
囚人たちは厳しい環境のなか、お互いに助け合い、特別な絆を築いている。長年収容されている年上の女性たちは、”ママ”と呼ばれ、血の繋がらない刑務所の中の”娘”たちの面倒をみる。贅沢品どころか、個人の持ち物を所有することさえほとんど許されない刑務所生活の中で、食事の残り物からご馳走を作ったり、”刑務所チーズケーキ”で誕生日を祝ったり。隔離された過酷な環境の中で、ありあわせのもので創意工夫をして、生活を楽しむ姿は女性ならではだと思った。
著者のバイパーは、収容された女性たちの中でも飛び抜けてラッキーだったと思う。刑期は13ヶ月と短く、毎週面会に来てくれる婚約者と家族がいる。受刑者の中には、家族との縁も切れ、釈放後はホームレスシェルターに直行する者もいるという。バイパーにとって、刑務所生活は不愉快な思いも多かったが、他の受刑者達との関わりの中で、”さらに良い人間になれる事を教えてもらった”という。
この本を読むことで、普段は見聞きすることのない、アメリカの女性刑務所の実体を垣間見ることが出来た。殺伐としているだろうという予想とは裏腹に、人と人との繋がり、逆境でも心穏やかに暮らしていくことの大事さを感じた1冊だった。
Orange Is the New Black: My Year in a Women’s Prison
YL:7(概算)
語数:87,000語(概算)
【今日の一枚】天文台にて