- Narrated by:
時間:13時間24分
発音:アメリカ英語
速度:170~190語/分前後
評価:5 out of 5 ホラーに分類されていますが、あまり怖くありませんでした。
【あらすじ】
1962年、ニューイングランドに住む6歳のジェイミー・モートンは、町に新しく着任した若い牧師と出会った。チャールズ・ジェイコブスは、美しい妻と共に教会を盛り立て、地元の人々から愛されていた。ところが、ジェイコブス一家を悲劇が襲い、牧師は信仰心を失ってしまう。教会に集まった信者の前で、神の存在を疑う不適切な礼拝説教を行ったジェイコブス牧師は教会から追放され、町から姿を消した。
1992年、人生のどん底にいたジェイミーは、意外な場所でジェイコブス牧師と再会することになる。
【感想】
面白かった!時が移ろい、自分と周囲が年を取っていくこと、親兄弟が亡くなって寂しく思うと同時に、子孫にその面影を見いだすこと・・・。なんだか切なかったです。
冒頭、キングは人生を映画に例えます。主役は自分と家族や友達。知人や顔見知りの人々が脇を固め、ただ単に通り過ぎるだけのエキストラもいます。そんな中、自分の人生に思いがけない重要な転機をもたらす“Fifth business”という存在がいます。主人公ジェイミー・モートンにとって、チャールズ・ジェイコブス牧師がその人生のワイルドカードでした。
1962年、6歳だったジェイミーは、庭でおもちゃの兵隊で遊んでいたところ、地面に影を落とす存在に気付きます。顔を上げるとそこに立っていたのは、新しく町に着任した若い牧師、チャールズ・ジェイコブスでした。
しばらくジェイミー少年の幼少期から高校時代に至るまでの他愛のない思い出話が語られるのですが、ジェイミーが遊んでいるところの地面に「陰ができた」という登場シーンがその後のジェイミーとジェイコブス牧師の関係を予感させるのです。
30代で薬物中毒者となり、人生のどん底にいたジェイミーは、地方のお祭りで偶然ジェイコブス牧師と再会します。それぞれの道を歩んでいた二人の人生がふたたび重なり、お互いに影響を与えつつ運命の輪が回り出す様子は、作中にある、’ Life is a wheel, and it always comes back around to where it started.’ という文章そのものでした。
不思議な物語で、最後のほうはオカルト。少しだけ後味が悪いです。ハッピーエンドでも良かったのではないかとも思ったのですが、「奇跡が起きて大団円!めでたしめでたし!!」となってもモヤっとしたような気もします。順風満帆、幸せだった人生に取り返しの付かない不幸が起こり、「この世に神などいない!」と絶望することも、現実世界では良くあることだと思うので。
この世に神はいない・・・が、この世界の向こう、扉の先に「人ならざる者」がいて、魑魅魍魎の世界が広がっているかもしれない・・・と思えてしまうのがキング作品の凄いところでしょうか。もし、今後どこかで枯れた蔦の絡んだ扉を見かけたら、この作品を思い出して走って逃げてしまいそうな気がします。
【今日の一枚】
マクドナルドがオシャレだったので。