【オーディオブック】Educated (2018)

Educated (2018)

時間:12時間10分

発音:アメリカ英語 落ち着いた女性ナレーターの声で聞きやすい

評価: 5 out of 5

 

Educated

 

【あらすじ】

作者は所謂”Survivalists”と呼ばれる、モルモン教徒の家庭で育った1986年生まれの女性。Taraの両親は政府を全く信用せず、2000年に世界が滅びると信じており、世紀末に備え完全自給自足の生活を送っていた。子どもたちの出生届も出しておらず、生まれた証明もないので学校にも行かず、大病をしても病院にも行かせない。アイダホ州の山間部に暮らす一家の父は解体業を営んでおり、母はハーブやホメオパシーの薬草・オイルなどを販売していた。またタラの母は無資格で助産師として活動しており、医療費を支払えない近所の女性たちのお産を請け負っていた。

 

Taraはホームスクールで教育を受けていることになっていたが、実際は読み書きレベルのレッスンを母から受けただけで、あとは家業の手伝いをしていた。7人兄弟の末っ子であるTaraは学校に行かずとも早くに結婚し、母の跡をついで無資格の助産師として家族を助けることを期待されていた。

 

ところが、大学に行きたいと家を出ていった兄の一人に影響され、16歳で大学試験を受けることを決意する。本当はまず高校を卒業しなければならないのだが、Homeschoolで十分な教育を受けたと偽り、独学で数学を学び大学に合格する。

 

大学に入学することはできたものの、本は聖書とモルモン教の経典くらいしか読んだことがないTaraには一般常識が欠落しており、ホロコーストも聞いたことのないレベルだった。高校卒業レベルの知識はおろか、トイレの後は手を洗う、毎日シャワーを浴びる、共用の場所は片付けるなどの一般常識さえ持ち合わせていなかったTaraはすべてを一から学ぶ必要があった。彼女が学問に目覚め、ケンブリッジ大学で博士号を取得するまでを綴った回想録。

 

【感想】

衝撃的な本だった! 引き込まれた理由は2点。「女に学問はいらない。女の場所は台所だ」と可能性を摘まれ、支配的な親や夫に虐げられていたTaraや周囲の女性の運命は、女性として自分の身にも起こり得ることだと思えて心底怖くなったこと。もう一つは教育を通じて可能性の扉が開いていく過程にワクワクしたこと。

 

Taraの家では父親の権威は絶対で、「女の居場所は家、学問を受けるなど神の意志に反する」とされていた。父は敬虔な信徒である自分は正しく、神に見守られていると信じているため、すべてが「神の意志」で片付けられてしまうのだ。このため、解体業中の事故で息子がガソリンタンクの引火で火だるまになり重症やけどを負っても、交通事故にあい、妻や息子が頭部外傷をおっても病院には行かず、すべて自分たちの力でなんとかしようとするのだ。

 

Taraが大学進学したいと希望した際、父や兄が全力で妨害するくだりを読んで、女子どもを無知のまま家庭に閉じ込めることで思うように支配しようする姿に気分が悪くなった。

 

父や兄に悪意はなかったのかもしれない。彼らは自分たちなりの「正しさ」の中に生きており、女たちをつつましく従順に指導しているつもりだったのだろう。

 

この本を読みながら、無知と宗教の最悪な組み合わせに嫌悪感が募った。自分たちに都合の悪いことをすべて「神の意志」で片付け思考停止している。親の教えが必ずしも正しいことではないと気づくには教育が大事だと思うものの、その教育さえ受けられないとすると、親の支配から抜け出すのは容易ではないだろう。

 

Taraの家庭ほど状況は悪くなくても、女性が学問を修めて知恵がつくと扱いづらいとする空気は自分の身の回りにもある。そのような空気に流されて家に閉じ込められてしまうと、状況は更に悪くなってしまう。女性が自立することの重要さについて考えさせられた本だった。

 

YL:7

語数:105,705語(概算)


Educated: A Memoir

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