【映画】The Batman (2022)

The Batman (2022)

 

【あらすじ】

ブルース・ウェインの両親が殺害されてから20年後。ブルースは犯罪のはびこるゴッサムシティを変えようと「バットマン」としてビジランテ活動をしていた。

市長選の最中、現職市長が殺害され、現場には“No More Lies” というメッセージと犯人リドラーからバットマンへの謎解きカードが残されていた。バットマンはゴッサム市警ゴードン警部補と共に連続殺人事件の犯人を追う。

 

【感想】

3月10日(木)IMAX20時回の先行上映で鑑賞。ここまでの道のりが長かった・・・。2020年1月に撮影開始してから3月にCOVID-19で撮影中断。その後主演ロバートパティンソンのCOVID−19感染などの紆余曲折を経て2021年3月12日に撮影終了。公開予定日も2021年6月25日→10月1日→2022年3月4日に延びてやっと公開です。めちゃくちゃ楽しみにしていたので、生きてこの日を迎えられたことに感謝です。

 

ここからはネタバレ感想。Spoiler Alert!

めちゃめちゃ良かった!!!70年代フィルムノワール風の雰囲気、夜の滑らかさと雨の質感が好き。アクション・ヒーロージャンルではなく、シリアルキラーを追う探偵ストーリーが良い。バットマンとなってまだ2年目のブルースは、両親を理不尽に殺された怒り、悲しみがまだ癒えておらず、心の傷がまだ血を流しているような生々しさで、精神的に不安定。唯一の味方、アルフレッドとの関係にも緊張感が感じられます。監督のマット・リーヴスはGood Time (2017)に出演していたロバート・パティンソン氏をイメージして脚本を書いたそうで、脚本の当て書きだけあって、この引きこもりなブルース・ウェインの陰気さ、未熟さがロバート・パティンソンの雰囲気とマッチしていて非常に良かったのです。冒頭、コンビニ強盗シーンでの店名がGood Times Grocery だったのを発見して嬉しくなりました。

 

そして今回の悪役リドラーを演じたポール・ダノの静かな狂気!カフェで逮捕された際の満面の笑み、人形の眼のような奇妙な眼球の動きが見事でした。お上品な中年女性のような見た目も良い。狂人というとアドレナリン噴出状態のうるさい演出を見ることが多いですが、前リドラーを演じたジム・キャリーのような感じだと、折角のフィルム・ノワールが台無しになってしまう。リドラーの職業がForensic Accountantというのも納得でした。金の流れから犯罪を追う。ブルースの父親、トーマス・ウェインが設立したチャリティ基金を資金洗浄の隠れ蓑とした犯罪者たちの秘密を暴いたリドラーと、お金のことなど無頓着で遺産を食い潰しても構わないと担当会計士に会うのを避けていたブルース。もしブルースがお金の流れをきちんと把握するような男だったら、チャリティ基金を巡っての汚職に自ら気付いたのかもしれません。

 

市長殺害の凶器がCarpet  Tuckerだった点について。リドラーの部屋のカーペットの下に、防波堤爆破地図が描かれているヒントになっていると同時に、”Sweep under the rug/ carpet” 隠されているものを暴く、という意味の成句が隠されていたのではないかと。”unmask the truth” というリドラーの目的に適っていて、凶器一つをとってもよく考えられているな・・と感心しました。

 

バットマンの正体について。

ファルコーネは死ぬ直前に気付きましたよね??20年以上前、銃創を負ってトーマス・ウェイン医師宅のダイニングテーブルの上で手術を受けた時、子供だったブルースは上からずっと見下ろしていた。ファルコーネは“お前の顔は忘れない“と言っていたから。あの時と同じで、銃で撃たれ、下からバットマンを見上げる状況だったので薄れゆく意識の中でブルースだと気付いたのではないかと。対してリドラーがバットマン=ブルース・ウェインという事に気付いたかどうかは分かりにくい描写だと思いました。リドラーの部屋の壁には“If only I knew then what I know now.”とありましたし、バットマンがゴードンに“You are a good cop.” と言ってアーカムに向かったのは、正体をバラされることを覚悟して、ゴードンにお別れの挨拶のつもりで言ったのではないかと思ったのです。アーカムホスピタルでのリドラーは、“Bruuuuuuce Waaaaayne” と思わせぶりに何度も言うので、てっきりバットマン=ブルースに対する呼びかけなのかと思いました・・・が、“Bruce Wayne… He’s the only one we didn’t get.” と。ということは、ブルースがバットマンである事に言及していない???どうしてこのシーンはこんなに分かりにくいのか。もしリドラーがバットマンの正体に気付いていたとしたら、バットマンの弱みを握っているので、こんな最強のカードをあんな所で簡単にバラしたりしないと思うんですよね。なので正体を知っているぞーーーという名前の呼びかけ監視カメラを意識してわざとあの台詞を言ってブルースをハラハラさせたのではないかと解釈しました。このあたり、次作ではっきりさせてくれないとずっとモヤモヤしそう。

 

ゆっくりめのテンポで手に汗握るような大きな盛り上がりなく進んでいくスタイルですが、丁寧に作り込まれているところがとても好きな作品でした。「今後ディレクター・カット版が出ますか?」との質問に、「好きなようにやらせてもらったので、公開版のみです」という監督マット・リーヴスのインタビューを見たのですが、確かに監督が良いと思ったようにやった感がありました。分かりやすいカタルシスが作中に2−3用意されているマーベル作品と比べると確かに地味ではあります。私の中では、同じ「ヒーロー」を素材にした作品でも、マーベルは色々な具材を派手に配置したスペシャルチョコレートサンデー。いっぽうでDCはカカオ86%の一粒チョコレートのようなイメージがあります。どちらも違ってどちらも良い。

 

影響を受けた映画作品として

セリーナとバットマンの関係性がKlute (1971).

プロットの参考にしたのが、チャイナタウン(1974)大統領の陰謀 (1976)

その他、フレンチ・コネクションタクシー・ドライバー

が挙げられていましたので、これらも全部観る予定です。

カテゴリー: 映画 タグ: , パーマリンク

コメントを残す