Grinding It Out (1977)
- Narrated by: Stephen Bel Davies
時間: 6 時間 58 分
発音:アメリカ英語
評価:4/5
マクドナルド創業者、レイ・クロックの自伝。レイ・クロック氏は“Founder“ではあるけれど、もとはマクドナルド兄弟がカリフォルニアで開いていた店舗に目をつけて、全国的にフランチャイズ化する役割を担った人です。1977年に書かれた本なので、まだマクドナルドが比較的新しく、イケイケだった時代の話が面白かったです。
クロック氏がマクドナルドのチェーン店を開くことになったのは、彼が52歳の時。何歳でも物事を始めるのに遅い事はないけれど、彼の場合は紙コップやミルクシェイクマシーンなどを売るやり手の営業マンであり、全国のキッチンに営業をかけ、良いオペレーションの売れる店を見る目があったため、満を持しての起業と言えたのではないでしょうか。
初めてマクドナルド兄弟の店をみたクロック氏は、キッチンがとても清潔で、ポテトの管理もよく、メニューは15セントのハンバーガーとポテト、飲み物のみ。全てテイクアウトでチップを払う必要がないのは、当時としては画期的だったらしく、これは売れる!と確信しました。
しかし、マクドナルド兄弟は現状に満足していて、苦労の多い多店舗展開には懐疑的でした。そこでクロック氏がフランチャイズを展開し、売上の1.9%をもらう。その1.9%からマクドナルド兄弟へ0.5%払う。当初の契約に何か変更を加えるならば文書で通知し、兄弟のサインをもらうこと、という内容で契約を結びます。
マクドナルドのチェーン店が成功すれば、マクドナルド兄弟も経済的なメリットがあるはずなのですが、クロック氏とマクドナルド兄弟はことあるごとに対立します。クロック氏の奥さんも安定したこれまでの職を疎かにし、新しい事業を開くことには大反対で、夫婦仲も険悪に。シカゴに1号店を開いたあとも、クロック氏は自分の給料も出ず、借金しながら店舗を拡大していきます。1つ15セントのバーガーの売り上げの、さらに1.4%の利益では手元に現金が残らず、資金繰りが悪化します。そこで新たにフランチャイズを出す際は、本部が土地を買い、20年間の借地としてフランチャイズオーナーに賃料を払わせるというやり方で経営を軌道にのせたそうです。マクドナルドが世界有数の不動産業であると言われる所以です。
クロック氏の商売への情熱は凄まじく、夜中の2時にライバル店のゴミ箱をあさり、どれほどの売上があるか調べるのも厭わなかったそうです。
カリフォルニアの小高い丘に自宅を購入した際、眼下にマクドナルドの店舗が見えたため、毎日双眼鏡で店舗の様子を観察していたそうです。そこの店長に「いつも家から双眼鏡で店舗を観察しているよ」と告げたところ、店長を震え上がらせたというエピソードも紹介されていました。とにかく全てが猛烈でした。
この本が書かれた1977年の時点では、まだ5000店舗に届いておらず、1万店舗出店したいという夢が語られていました。今現在、マクドナルドは世界で4万店舗あり、毎日世界の人口の1%がマクドナルドを食べている計算になるそうです。すごいエネルギー量の本でした。
ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密というドキュメンタリー映画では、マクドナルド兄弟の言い分も語られており、クロック氏がえげつない手段で兄弟からマクドナルドを奪った様子が描かれていました。本人が書いた自伝と比べるとだいぶ印象が違うので、比較しながら見るのも楽しかったです。
語数:56,000語(推定)
YL: 7