【オーディオブック】Shoe Dog

Shoe Dog: A Memoir by the Creator of Nike(2016)

時間:13 時間 21分

発音:アメリカ英語

評価:5/5

【あらすじ】

父親から借りた50ドルを元手に、アディダス、プーマを超える
売上げ300億ドルの会社を創り上げた男が、ビジネスと人生のすべてを語る!

1962年晩秋、24歳のあるアメリカ人が日本に降り立った。
彼の名はフィル・ナイト。のちに世界最強のブランドの一つとなる、
ナイキの創業経営者だ。

オニツカという会社がつくるシューズ「タイガー」に惚れ込んでいた彼は、
神戸にあるオニツカのオフィスを訪れ、役員たちに売り込みをする。

自分に、タイガーをアメリカで売らせてほしいと。

スタンフォード大MBA卒のエリートでありながら、なぜあえて靴のビジネスを選んだのか?
しかもかつての敵国、日本の企業と組んでまで。

「日本のシューズをアメリカで売る」。

馬鹿げたアイディアにとりつかれた男の
人生を賭けた挑戦が、このとき始まった! (Amazonより)

 

【感想】

4月7日(金)に公開された映画Airを見る前に読みました。面白かった!映画は1984年、新人だったマイケル・ジョーダンとNIKEのスポンサーシップを結ぶために奮闘する話ですが、こちらの本は、NIKE1962年創業時から1980年IPOするまで。本を読んでいなくても映画は楽しめるのですが、起業の苦労を本人の言葉で読むことが出来て映画がより面白く感じられました。

 

なぜ1962年から1980年までの話なのか、というのは今は残っていない創業時メンバーとの苦労も多かったが、本当に楽しかった時代を語りたかったからのようです。また、かなりの無茶振りをしたにも関わらず、期待に応えてくれ会社の生き残りに多大な貢献をしてくれたメンバーにねぎらいの言葉をかけることもなく、雑に扱ってしまったことを後悔し、創業メンバーのことを皆に知ってほしかったという思いもあるようです。

 

スタンフォード大学MBA卒業後、フィル・ナイトは友達2人と世界旅行に旅立ちます。最初の目的地ハワイを気に入ったため世界旅行は中止。百科事典の訪問セールスをしながらアフターファイブはサーフィン三昧。友達に彼女が出来てハワイに残ることにしたため、フィルは1人で世界旅行を再開します。

 

今後の靴業界は日本の成長が鍵を握るだろう、とMBAの授業で発表した彼は、日本のオニツカタイガー(現アシックス)の靴を輸入販売するため1人で神戸の本社を訪れます。まだ起業していなかったにもかかわらず、すでにブルーリボン社という会社があるように話をでっちあげ、熱意を買われて50ドルで契約を結ぶことに成功します。

 

フィルは、オレゴン大学陸上部時代のコーチであったビル・バウワーマンに声をかけ、2人でブルーリボン社を立ち上げます。バウワーマンは、フィルが学生時代から既成の靴を自ら解体・改良するほど熱心で、何人ものオリンピック選手を育てた人でした。

 

創業から何年も自分の給料を出すことができなかったため、フィルは公認会計士の資格を取り、会計事務所に勤めながら会社の経営をします。創業メンバーは皆強烈な個性の人たちばかりなのですが、一番興味深かったのは、最初の従業員ジェフ・ジョンソン氏です。スタンフォードMBAの知り合いであったジョンソン氏は1965年ブルーリボン社に入社します。10ヶ月で3250足の靴を売ってこい!という不可能に思えた売り上げ目標を1人で達成。彼は相当な筆まめで、高校や大学の陸上チームを訪ねては靴を売り、顧客の情報カードを作成。顧客の誕生日や試合前などにメッセージカードを送り、何百人もの顧客と“文通“状態にあったそうです。ボスのフィルが嫌になるほど彼にも手紙を送りますが、フィルは一切無視し、ジョンソン氏は孤軍奮闘します。この“文通友達”だった顧客の高校生から東海岸でブルーリボン社以外にオニツカタイガーと代理店契約した会社がある、との情報提供を受け、彼はその高校生の自宅を訪問。高校生が自宅に帰ると家族と食卓をともにしていたそうですから、素晴らしいコミニュケーションスキルです。彼は西海岸に最初のナイキ小売店を作ったり、東海岸に拠点を築き、後には靴の開発にも携わっていたそうです。

 

ブルーリボン社から新しい社名に変わる時、フィル・ナイト氏は“ディメンション・シックス“という名を思いつきますが、皆に反対されます。NIKEという名を考えついたのはジョンソン氏で、勝利の女神の名前であること、短くて覚えやすく、成功した企業の名前の特徴(KやXなど強い音を持つ)を捉えていることから決定したそうです。1981年にNIKEが新規株式公開を果たした時、共同経営者のバウワーマン氏は9 millionドル、創業メンバーたちは6 millionドル、フィル・ナイト氏は178millionドルを手にしたそうです。当時の6億ドルは現在の価格で20億円超。苦労が報われて本当に良かったです。

 

今では300億ドル以上の売り上げを持つNIKEですが、1980年頃まで売り上げはどんどん伸びるのに手元に現金が残らない状態でした。靴を発注する→売り上げが入金されるがすぐに発注先や従業員の給料を振り込む→残金ゼロ、の自転車操業だったようです。創業当初に地元に銀行に融資を断られ、事業が軌道に乗り換えた時もキャッシュフローが悪く、貸し倒れのリスクを懸念され、突然融資を打ち切られます。今日にも倒産!という時にかねてから付き合いのあった日本の総合商社日商のビジネスマンが大きなリスクを取り、資金を取り付けます。

 

その日の出来事が克明に記されていて、昔のことながら手に汗握る展開でした。オニツカ、日商など日本との縁も深く、日本がまだいけいけどんどんだった時の興味深いエピソードが満載でした。

 

垂直に落ちるジェットコースターのようにスリリングで、起業の苦労、面白みを一緒に体験できる本でした。翻訳本もありますし、読みやすくておすすめです。

 

 

    

YL:7.5(概算)

語数:100,000語(概算)

カテゴリー: ノンフィクション タグ: , , , , パーマリンク

コメントを残す